一般社団法人東京都金属プレス工業会は、TMSAコネクテッドに新たにグローバルポータルを開設し、さまざまな海外情報を配信する。主要コンテンツは、海外情報配信事業(海外特派員)と海外研修事業(TMSAミッション団派遣)で構成する。
海外情報配信事業では、主要国(アメリカ、ドイツ、フランス、インド、中国、ベトナム、タイ、台湾)に特派員を設置し、①政治、②経済、③産業、④技術、⑤商取引(取引適正化)、⑥教育、⑦文化、⑧芸術、⑨国際コミュニケーション、⑩トピックなどの情報をタイムリーに配信する。2023年は、ドイツ(ミュンヘン)とインド(ムンバイ/チェンナイ)へ渡航し、現地情報を取材し、TMSAコネクテッドを通じて情報発信した。
海外研修事業では、10月に金属プレス国際会議、通称ICOSPA国際会議が大阪で、ASEAN最大級の工作機械・金属加工関連展示会METALEXはタイ・バンコクで開催される。本会はこの2大イベントに注目し、取材クルーを派遣し、情報収集及び情報発信を行う予定である。
海外情報配信事業(海外特派員)
海外情報配信事業(海外特派員)は、畠山佳奈子(ドイツ特派員)、大貫麻奈(フランス特派員)、石﨑奈保子(インド特派員)、斉海龍(中国特派員)、レー ミン チュオン(ベトナム特派員)、齋藤正行(タイ特派員)、諸治隆仁(台湾特派員)が担当する。各国の政治・経済・産業・技術・商取引(取引適正化)・教育・文化・芸術・国際コミュニケーション・トピックなどをテーマに有益な情報を随時配信する。
ドイツのEV充電インフラ:現状と課題、そしてEV充電のイノベーション 畠山佳奈子(ドイツ特派員)
ドイツの自動車産業:イノベーションと自動車産業の影 畠山佳奈子(ドイツ特派員)
いよいよ「インドの世紀」到来 ~数字が伝えるインドの勢い~ 石﨑奈保子(インド特派員)
インド人の創意工夫:Jugaad(ジュガール) 石﨑奈保子(インド特派員)
「消費のダウングレード」ー中国若年層の消費に与えた影響 斉海龍 (中国特派員)
「烂尾娃」:高失業率の背景における「無声の叫び」 斉海龍 (中国特派員)
ベトナム高速鉄道、2027年着工予定去 ヴ― ヴァン クエット(ベトナム特派員)
ベトナム共産党のチョン書記長80歳で死去 ヴ― ヴァン クエット(ベトナム特派員)
思いつくのは観光促進だけ? 観光業回復に期待するタイ政府 齋藤正行(タイ特派員)
先行き暗いタイ自動車関連産業、期待なき業況感の回復 齋藤正行(タイ特派員)
半導体、AI、情報通信など5分野に注力 諸治隆仁 (台湾特派員)
海外研修事業
海外研修事業で、10月の金属プレス国際会議(大阪)とASEAN最大級の工作機械・金属加工関連展示会METALEX(タイ・バンコク)の2大イベントに注目し、取材クルーを派遣し、情報収集及び情報発信を行う予定だ。金属プレス国際会議は、日本をはじめ、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、中国のプレス部品業界のリーダーや専門家が集まり、さまざまなテーマを議論する。METALEXはTMSAミッション団を派遣し、展示会見学、国際交流、工場見学などを実施する。
TMSAインド・ミッション団 ハイライト (前半)
日 程 | 2024年2月13日~18日(4泊6日) |
ミッション団 | 6名 |
団 長 | 株式会社クラフテックオカモト 代表取締役社長 岡本 太郎 |
副団長 | 株式会社 増田製作所 営業開発部 執行役員 土居 左千夫 |
団 員 | 株式会社 マスコエンジニアリング 営業部部長 柿崎 孝司 |
〃 | 有限会社 村山商事 代表取締役 相馬 頼美 |
事務局 | 一般社団法人 東京都金属プレス工業会 栗原 一利(事務局) |
コーディネーター | 株式会社 事業革新パートナーズ 石崎奈保子(グローバルポータル事務局) |
1)事前準備
2024年2月13日~18日、本会としては初の公式訪問となるインドに、総勢6名から成る「TMSAミッション団」を派遣した。6名中、5名がインド初上陸となるため、「旅のしおり」を作成し、訪問先、面会者、国の概況、食事、通信事情等々の情報を予めインプットして、準備万端、本番(インド渡航)に臨んだ。
今回は、ムンバイで開催されるDie and Mould International Exhibition 2024(インド国際金型展)に合わせてスケジュール組みを行った。インドは29の州から成り、国土はEU全土の面積に匹敵するほど大きい。しかし、せっかく渡航するのだから1都市だけではもったいない。そういうわけで強行軍ではあるが、西のムンバイと南のチェンナイの2都市を訪問することにした。
インド人は、都市間の移動に飛行機を頻繁に使う。1,350㎞も離れているムンバイ・チェンナイ間の移動は飛行機で2時間。展示会に出展するプレス会社の社長などは、早朝便・夜便を使い、日帰り出張を行う。我々も、その雰囲気を少しでも味わうべく、ムンバイ→チェンナイ(1泊)→ムンバイと、IndiGo航空(インドのLCC)を利用して移動を試みる。
ちなみに、ムンバイ(旧ボンベイ)はアラビア海に面した西部最大都市かつ金融・貿易の中心地であり、チェンナイ(旧マドラス)は、ベンガル湾に面した「南インドの玄関口」で南部最大都市である。インドにおける州内総生産は、ムンバイのあるマハラシュトラ州が第1位、チェンナイのあるタミル・ナドゥ州は第2位。これら2つの州を訪ねれば、成長著しいインドの勢いを肌で感じることができるものと期待する。
2)ムンバイ編
ムンバイの主要産業は、IT、金融、映画(ボリウッド)であり、自動車産業は、地場のタタ・モーターズと、マヒンドラ・マヒンドラの本社があるくらいだ。ものづくりに関しては、「プラスチックシティ」と言われるくらいにプラスチックの金型・成形企業が多く、金属プレス関連企業が少ない。しかし東へ150キロ、プネという都市へ行くと、自動車産業の一大クラスターがある。フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、アウディなど、欧州系を中心とした自動車工場が集積しており、それらに紐づく欧米系、インド・ローカル系の部品会社が多数存在している。
2.1 インド国際金型展
TAGMA(インド金型工業会:インド全国を対象とした金型産業を中心とした工業会、会員数665社)が隔年で主催する同展は、会場も1から2会場へと拡大し(面積30%アップ)、15か国より300 社を超える出展者数を記録。TAGMA役員もインド各地から一堂に会し、華々しく開会式が催された。
タタ エレクトロニクス・ツール担当副社長のジム・ウォルシュ氏は、開会式のスピーチで「事業をインドに移転する企業から、スピード、精度、革新、能力が求められている。・・・この機に乗じて、従業員のスキル開発、工場のキャパシティ強化、ものづくり精度向上、納期遵守など、さまざまな側面に焦点を当てる必要がある。インドはチャンスを捉え、既存のギャップを埋めなければならない」と述べた。もはや、安く作れば良いという時代は終わり、いよいよ日本が得意とする「品質(Q)」と「納期(D)」で勝負する時代に入ったのだと、少し脅威に感じた瞬間だった。
展示会場では、インド新規金型企業の参入とインド従来企業の品質向上が目立っていた。出展者、来場者ともに日本人が多く(2年前の約2.5倍)、日系商社やサプライヤーのグループが多数出展していた。FANUCの小間には説明員として日本人が多かったが、普段は現地社員300人に対し日本人3人で運営しているという。他の日系企業も同様に、運営面はインド人に任せつつあるようだ。
そのほか、現代自動車がプネ市の旧GM工場を買収し、インド政府からのEV補助金を受け大規模投資をした影響から、韓国勢の積極さも目立っていた。一方、インドでは経済安全保障の観点から「脱中国」が加速しており、中国金型メーカーは見切りをつけて撤退した企業もあり出展は少数だった。
2.2 GODREJ & BOICE社(プレス・ダイカスト・プラスチック金型メーカー)
GODREJ & BOICE(ゴッドレジ・アンド・ボイス)社は、200エーカー(80万平方メートル、東京ドーム17個分)にわたるマングローブ林を所有する財閥経営企業である。1897年、錠前メーカーとして創業。以来、徐々に多角化し、現在では人工衛星、航空宇宙、不動産、消費者製品、工業デザイン、家電、農業機械、金型、精密等、取扱う製品も多岐にわたる。ショールームには、ベッド、洗濯機、冷蔵庫、金庫など、様々な最終製品が並べられており、「一部屋すべてを、ゴッドレジ製品群で埋め尽くすことができる」と語っていた。
広大な敷地内では1万人以上が活動しており、学校や病院も整備され、持続可能なコミュニティを形成していた。我々を案内してくれた社員は、「ゴッドレジ・ファミリーの一員であることを家族全員が喜んでいる」と誇らしげであった。
プレス金型は、トランスファー、順送、タンデムを供給しており、トラクター、商用車、二輪車を含む乗用車用の大型金型製作を専門としている。顧客は、四輪ではマルチスズキ、トヨタ、ホンダ、GM、TATA, Mahindra&Mahindra等、二輪ではホンダ、Tier1メーカーではケイヒン、Valeo、Bosch等、多岐にわたる。
(前半終わり)
Productronica2023に工業会ブースを出展
2023年11月12日~19日、TMSA ミッション団をドイツに派遣した。東京都金属プレス工業会は、Productronica 2023に出展し、現地において情報収集、国際交流、情報発信を行った。AI、 電子部品のパワー、センサー技術の3つをキートピックとした本展示会には、45 か国より 1,400 社が出展。当社小間には、初日から多くの方々に立ち寄っていただいた。
日本企業に対する欧州進出アドバイザーの方にインタビューした際には、ドイツと日本の違いについて学校事情から職場環境の違いまで興味深いお話を伺った。その時の様子をダイジェスト版でご紹介したい。