深刻化するハノイの大気汚染問題

ベトナム特派員 ヴ― ヴァン クエット

写真:労働新聞・VIET ANH記者

ベトナムでは急激な経済発展が進む一方で、大気汚染が深刻な社会問題となっている。2025年2月11日、ハノイ市およびその周辺地域において、空気汚染指数(AQI)は227に達し、健康に深刻な悪影響を及ぼす水準に至った。この数値は中国に次ぎ、2番目に深刻な数値を示している。

さらに、国内の各地域でも高い汚染指数が確認されている。ハンイエン省では227、ハイズオン省では220、ハノイ市では213、タイグエン省では197を記録しており、大気汚染は広範囲に拡大している。

空気質指数(Air Quality Index, AQI)とは、大気の汚染状態を分かりやすく数値化して示す指標である。AQIは、空気中の主要な汚染物質(微小粒子状物質PM2.5やPM10、二酸化硫黄、一酸化炭素、オゾンなど)の濃度を基に、空気の質を評価する指数である。AQI値227は、健康に深刻な影響を及ぼし、すべての人々に影響が生じる可能性があると評価される。

大気汚染の原因について、専門家は冬季特有の気象条件を挙げている。湿度が高く、雨が降らない日が続くことで汚染物質が大気中に滞留しやすくなるためである。また、経済の急成長に伴い、都市部での工場稼働や高層ビル建設現場の影響が増加していることも指摘されている。さらに、ハノイ周辺では農作業における藁の焼却が主要な汚染源の一つと考えられている。

これらの要因により、高齢者や子どもたちに呼吸器疾患が発生しやすい状況が懸念されている。このような健康被害を未然に防ぐため、天然資源環境省は国民に対して注意喚起を行っており、汚染問題に対する迅速かつ適切な対策の実施を求めている。とくに汚染源となる工場や焼却作業を削減する努力が必要不可欠である。

持続可能な未来の実現には、政府と市民が連携して大気汚染問題に取り組む必要がある。そのためには、より厳格な規制や法整備、さらには環境意識の向上が求められる。また、再生可能エネルギーの導入や、藁焼却に代わる方法の普及といった技術的な取り組みも急務である。このような包括的な対策を講じることで、汚染度の低下を目指すと共に、国民の健康を守ることができるだろう。今後の取り組み次第では、大気汚染問題を解消し、経済発展と環境保護の両立を図ることが可能である。