機械(加工)部品のオンライン調達、最も利用している業界はどこか

 板金や切削を伴う機械(加工)部品をWeb上で調達できるオンラインサービスが人気を呼んでいる。特に社会全体がコロナ禍に陥った2020年以降、サービス提供会社の売上は驚異的な伸びを示している。業界最大手のミスミが運営するAIプラットフォーム「meviy(メビー)」の場合、2019年4月のサービス開始から3年で利用者は10万ユーザーを超え、2023年中には欧州、北米に加え、中国での提供開始を予定する。

 ミスミ以外のサービス提供会社の業績も押しなべて好調で、3年前と比較して2倍以上の伸びを示している模様だ。ブームの一因として、業界関係者は「コロナ禍前までオンライン調達に懐疑的だった人たちが、背に腹は変えられない状況の中で活用し、その便利さが分かって一気に拡大した」と見ている。

 サービス内容は提供会社ごとに異なるため、一概には言えないが、一般的に提供会社のサービス用アカウントを取得すれば誰でも利用でき、追加のインストールも不要である。サービスラインアップは板金、切削、旋削、3Dプリンティングなどで、1点ものから量産まで対応。材料は鉄、アルミ、ステンレス、樹脂などが用意されている。
 利用者は、部品の設計データ(CADデータなど)をアップロード。工法、材質、個数などを選択し、送信する。サービス提供会社はその情報をキャッチすると、それぞれ独自の見積システム(全自動のほか、半自動+手計算の場合もあり)を動かし、数分~1時間で見積りと納期を返信する。

 オンライン調達を頻繁に利用するメーカーには、一定の傾向がある。自動車や家電製品など量産型のメーカーは少なく、FA機器や自動機、建設機械、半導体製造装置など、多品種少量型で多量の図面が発生するメーカーが多いことだ。またこれらの業界傾向として繁閑の差が著しく、繁忙期になると既存のサプライチェーンだけでは需要に対応しきれない状況が生まれることも理由のようだ。

 では、すべての業界の中で、オンラインサービスを最も利用しているのはどの業界か。答えはFA機器でも建設機械でもなく、板金に代表される加工業界だという。オンラインサービスのビジネスモデルを下支えしているのは一品物の加工を得意とする板金業界であることはよく知られるところだが、サービスの利用でも一番であったのだ。普段の仕事の中で見積りを依頼されたが、それに時間を割くゆとりがなかったケース。オンラインサービスのサプライチェーンとして仕事が回わってきたが、設備が満杯のため代わりの事業者を探すケースなどいろいろだが、どれもサービス提供会社との契約上は特段、問題はない。中には、Webから得た見積りを見て、板厚や形状を変え、再度Web上で見積もってもらうという賢い使い方をする板金会社もある。板金業界ではオンラインサービス自体を競合と見る向きもあるが、考え方しだいで味方にすることもできそうだ。