「金型製作の全自動化」という言葉をよく耳にする。生産性向上や人手不足の解消に向けて、金型製作部門を持つ多くの企業が関心を寄せている証でもある。金自動の金型づくりは、1990年代後半に3次元のCAD/CAMソフトが登場した頃から期待されるようになった。だが、当時は周辺技術が未成熟で、まだ夢物語にすぎなかった。それが自動化技術の急速な進歩により、にわかに現実味を帯びてきたのである。
金型づくりの全自動化というと、多くの人がイメージするのは金属3Dプリンターを活用する方法である。実際に、樹脂金型やダイカスト金型では珍しくなくなっている。除去加工でなく積層加工のため、仕上げ取り代を残すだけで造形でき、水管を所望の部位につくれるなど、設計の自由度やコスト面のメリットはきわめて大きい。しかし、この方法を金属プレス金型にあてはめるのは無理がある。金属3Dプリンターで使える材料は、現状ではきわめて限定され、堅牢性+精密性のニーズを満たすことができないからである。
こうした中、プレス金型製作の全自動化で注目されているのは、ロボットやIoTを活用する方法である。一例をあげると、自動車用プレス金型の設計・製作を行うオオイテック(群馬県太田市)は、2021年1月からCAMソフトウェアを軸にMC、ロボット、PLCなどで構成される全自動金型加工システムの運用を開始。外注依存度の高かった構造部加工の内製化を実現した。今後、システム内に同時5軸加工機を導入する計画もあり、それが実現すると形状部加工も全自動化され、外注費の大幅削減と納期短縮の2つの目標を達成できるという。
ただし、いまや業界内外から注目される同社だが、全自動だけにこだわっているわけではない。実際には、金型づくりは一品一葉であり、全自動よりも人が介在する半自動のほうがスムーズに行く場合も多いからだ。ましてやロボットは掴めるワークサイズや重量は限定され、そこから外れるものは全自動ではこなせない。また、全自動の1個当たりの納期のリードタイムは長いが、人が付くことでリードタイムを短縮できる場合もある。同社ではそれらを踏まえたうえで、ハイブリッド化で臨む考えである。これは、手をかけるべきところは人間がガッチリ行い、そこから先を全自動で行うということを意味している。
つまるところ、先進例ではあるにせよ、プレス金型製作の全自動化時代はすでに始まっており、あとは運用の仕方しだいと言えそうだ。