政府は2025年版中小企業白書を発表した。この白書は、中小企業庁を通じて毎年公開される報告書であり、日本経済における中小企業の動向を詳述し、それを基にした政策の方向性を提示している。2025年版は、とくに2024年度の経済状況や中小企業が直面している具体的な課題、そしてそれに対する施策が詳しく記載されている。
白書は2部構成となっており、第1部で中小企業の現状と経済環境の影響を分析し、第2部では持続可能な成長のための具体的な取り組みや戦略を紹介している。
2025年版中小企業白書では、人手不足や労働生産性、賃上げ、設備投資といった課題について具体的な数値とともに状況が示された。例えば、コロナ以降は人手不足が業種全般で深刻化しており、販売従業者やサービス職業従業者、建設作業者などの現業職の不足感がとくに顕著である。また、2024年の春季労使交渉で約30年ぶりに賃上げ率がプラス4.5%を記録し、中小企業において高い水準となっている。中小企業の労働分配率はすでに80%に近くに達しており、人件費の負担が大きい状況にある。このため、賃上げ余力が限られている中で賃上げを実施している企業の多くが、業績の改善を伴わずに実施している。また、付加価値額に対する営業利益率が低いため、コスト増加が収益に及ぼす影響が懸念されている。
設備投資に関しては、2024年度の計画で前年度比増加が見られるものの、その伸び率は低下している。物価・金利・人件費の上昇が企業の負担を増加させる中、設備投資を通じた業務効率化や付加価値向上が急務となっている。
2024年には倒産件数は10,006件に達し、コロナ禍以降増加傾向が続いている。この数値は、中小企業が依然として厳しい経営環境に直面していることを示している。また、黒字で休廃業する企業の割合は51.1%に達しており、後継者が見つからないため、黒字でありながら休廃業を選択するケースも増加している。さらに、事業承継がうまく進まず、経営者の平均年齢が依然として高いことも、大きな課題として挙げられる。
こうした課題の解決には、商工会議所や地域の商工会、さらに自治体が運営する経済センター支援機関を積極的に活用することが必要だといえる。これらの機関は、経営相談、資金調達の支援、デジタル化の導入サポート、ネットワーク形成など、多岐にわたる支援を企業に提供している。加えて、企業が直面する課題の解決策を提案するだけではなく、企業同士の連携を強化するイベントの開催も行っている。
支援体制の強化は、中小企業が直面する課題を克服し、持続的な発展を実現するために不可欠である。そのため、支援機関が果たすべき役割は極めて重要といえる。
2024年度における中小企業の経常利益は長期的に上昇傾向にあり、平均成長率は約4.8%とされる一方で、大企業との差は拡大している。業況判断指数(DI)は前年度比で6ポイント低下し、依然として厳しい状況が続いている。これにより、人手不足や賃金上昇への対応が重要な課題として浮上している。
中小企業における賃金上昇率は平均で3.4%となり、労働生産性の向上が鍵となる。デジタル化や設備投資の推進が期待されているものの、設備投資額は総売上高の3%に満たない水準にとどまっており、その拡充が求められている。同時に、外部環境としての金利上昇や円安の影響が企業に及んでおり、借入金利の負担は年間で約2.5%増加、輸入物価は平均で12%上昇している状況だ。
この白書全体を通じて、中小企業が持続的発展を遂げるためには、労働生産性の向上やデジタル化の推進、地域との連携、社会課題への対応が必要であると結論づけられている。これらの取り組みを基に、企業が未来に向けた戦略を策定し、地域社会と共に成長することが期待される。
