2025年10月16日、「『受発注業務DX』研修&実証検証」がスタートしました。本研修は、国が推奨する「中小企業共通EDI」を軸に、受発注業務のデジタル化を通じて企業のDXを推進することを目的としています。今回の研修には、東京都金属プレス工業会の会員企業12社が参加。業界全体でのDX推進を視野に、実践的な学びと検証に取り組みます。
初回研修は座学形式で行われ、講師の野田和巳氏(ITコーディネータ協会/株式会社ビズサイト代表取締役)より、紙やFAXに依存した業務の課題や、「中小企業共通EDI」を活用した業務革新の可能性について解説がありました。参加者からは「自社の課題が明確になった」「DXの第一歩として受発注業務から見直したい」といった声も寄せられ、意識の高まりが感じられました。
野田先生がとくに強調したのは、既存のEDIが中小企業に普及してこなかった背景です。高コスト、過剰な機能、複雑な操作画面となどが導入の障壁となり、紙文化からの脱却が進まず、企業間取引のデジタル化が遅れている現状が共有されました。こうした課題を乗り越えるためには、低コストで、簡便かつ実務に即したEDIの存在が不可欠であり、「中小企業共通EDI」はまさにその解決策として位置づけられています。
本研修は全5回構成で、座学に加え、ワークやディスカッションを通じて、参加企業が自社の課題を抽出し、「中小企業共通EDI」の導入による解決策を検討していきます。今回参加した12社のうち、4社は実証検証の対象企業として選定され、実際に共通EDIを導入し、その効果を定量的・定性的に評価する予定です。
導入事例として紹介された株式会社ササキ(山梨県韮崎市)は、ワイヤーハーネス加工や電子機器組立を手がける企業です。同社では「中小企業共通EDI」の導入により、発注業務の受入れ時間を1件あたり45秒から16秒へと短縮。また、サプライヤー81社のうちEDI取引企業17社で発注件数の86.6%を占めるなど、業務効率化とミス削減において大きな成果を上げています。現在は請求業務のデジタル化も視野に入れ、さらなるDX推進に取り組んでいます。
本研修を契機として、受発注業務にとどまらず、納品・検収・請求・支払いなどの業務プロセス全体への展開や、在庫・配送管理への応用も期待されています。さらに、東京都金属プレス工業会を通じて、研修成果を業界内で共有し、「中小企業共通EDI」の認知拡大を図ってまいります。次回以降の研修では、ソリューション紹介や導入ステップの検討、先進事例の紹介など、より実践的な内容が予定されています。中小企業のDX推進に向けた第一歩として、今後の展開に大きな期待が寄せられています。

