AI・半導体輸出の拡大により2025年の台湾経済は7%超の成長へ

台湾特派員:諸治隆仁

 AIブームを背景に台湾の経済成長は15年ぶりの高成長ペースとなっている。台湾の民間シンクタンクである台湾経済研究院は2025年7月、同年の実質GDP成長率の予測値として約3.02%と発表した。しかし、AI、半導体関連の輸出が想定以上の伸びを見せたことから、同年11月に予測数値を上方修正し、約5.94%とした。

 一方、台湾の国家予算、財政業務、統計業務を所轄する機関である行政院主計総処も同様に、2025年8月、成長率予測を4.45%と発表していたが、11月には7.37%へと大幅に引き上げた。2025年通年の台湾、その経済、産業を振り返る。

2025年の台湾、GDPは7%越えに上方修正

 15年前の2010年頃、台湾は馬英九総統が率いた親中派の中国国民党政権下にあった。中台関係の改善を最優先し、中台の自由貿易協定にあたる「両岸経済協力枠組協定(ECFA)」が締結されるなど、関係回復が進められた時期だ。世界各国がリーマンショックによる世界同時不況の渦中から脱していく中、中国もインフラ整備、不動産売買、家電需要が急拡大。台湾は半導体、電子部品、工作機械、精密部材といった製品で中国の主要供給源となっていたことから中国経済好況の恩恵を被った。

 しかし、2025年の好況について、台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)、行政院主計総処の双方が今回の成長率の大幅な上方修正を牽引しているのはAI、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)、先端半導体分野と分析している。経済部は2026年1月、2025年通年の輸出受注額を発表。輸出受注総額は前年比26%増の7437.3億米ドル。AIサーバー・クラウド関連機器、GPUなどのAI製品需要の増加が数字を押し上げたと分析している。

 現在、AIサーバーに利用されているNVIDIAの最新・最先端AI向けチップ、ブラックウェル世代はTSMCの4nm(N4系)プロセスで製造されている。4nmプロセスで生産できる半導体メーカーはもちろんTSMC以外にもある。しかし、高歩留りを維持し、安定供給できるのはTSMCしかないというのが現状。こうした背景から、台湾は現在、世界経済における「AIの供給拠点」になっている。

AIスーパーコンピューターの頭脳「NVIDIAブラックウェルGB300 NVL72」

頼総統が言及した国家戦略の「AI島(AIIsland)」構想

 台湾の頼清德総統は2026年1月1日、「強靭な島、希望の光」と題した「2026年新年談話」を行った。その中で台湾政府は「より安全で強靭な台湾の構築」「知性的で繁栄する台湾への邁進」「より均衡ある発展を遂げる台湾の建設」「民主的で団結した台湾の促進」という4つの総目標を継続して進めるとした。産業界が注目すべきは「知性的で繁栄する台湾への邁進」で掲げた「AI新十大建設」だ。

  1. 主權AI及算力建設:台湾独自のAI基盤(主権AI)と高性能計算(HPC)インフラの構築。AIモデル開発・データセンター等の国家級基盤整備を進める。
  2. 智慧政府と資料治理(データガバナンス):各政府機関データの共有・流通を整備し、AIを活用した行政サービスの革新を促進。
  3. 千萬AI應用人才與千億創投資金:AI人材育成(教育・訓練)と創投資金の活性化によるイノベーション促進。
  4. 區域AI均衡發展:都市部だけでなく地方や中小企業にもAIを普及させ、地域格差を縮める。
  5. 兆元級軟體平台產業(ソフトプラットフォーム):大規模AIソフトウェアエコシステムを育成し、ソフトとハードの統合を強化。
  6. 推動百萬家產業應用AI:製造業やサービス業など100万社規模の企業にAIを導入し、全産業の生産性向上を図ります。
  7. 矽光子技術(Silicon Photonics):次世代の高速データ転送技術(シリコンフォトニクス)の研究・産業化推進。
  8. 量子運算/量子科技:量子計算・量子技術の研究開発を強化し、AI計算能力の飛躍的向上を狙う。
  9. 智慧機器人技術:ロボット・自動化技術の開発・産業応用を推進し、製造業・社会サービスをAI化。
  10. AI智慧生活圈・智慧城市:AIを活用したスマートシティや生活インフラを全国に設置し、日常生活全般の効率・利便性を向上。

 台湾が国家規模で進めるとしている、この10の大型インフラ・産業振興プロジェクトは技術・基盤・産業応用・人材育成・スマート社会まで幅広くカバーする国家戦略。台湾政府はこの取り組みが台湾を「AIの島(AI Island)」へと進化させ、次世代の国際競争力を確保するためのものになると位置付けている。

台湾・嘉義で着々と建設が進むTSMCの最新鋭後工程ファブ「AP7」

 2025年11月には米Googleが国外で最大級のAIハードウエア・エンジニアリングセンターを開所。また、台湾政府は2025年12月に台南の科学園区に大規模なAIデータセンターを開設。高雄にはNVIDIAとホンハイグループがデータセンターの建設を進めており、2026年上半期の完工目指し、最終段階に入っている。台湾は「AIの製造拠点」から「AIの設計・イノベーション拠点」へと脱皮し始めている。