生成AI関連企業の株価が上昇し、AIは産業の主要な柱として注目を集めています。急速に普及する生成AIは、情報検索や文書作成、翻訳といった日常的な作業をこれまで以上に迅速かつ容易にするなど、社会に新たな利便性をもたらしています。一方で、データセンターの電力需要の増加や冷却に必要な水使用量の拡大など、社会インフラの運用にも影響を及ぼし始めています。
たとえば、アメリカ西部の乾燥地帯では、AIデータセンターが地域の水資源を圧迫し、井戸の枯渇や電気料金の上昇といった形で住民生活を脅かしています。AIモデルの訓練や推論には膨大な電力が必要であり、世界各地で電力網の増強が追いつかない状況も生じています。2027年までに世界のAIデータセンターの約4割が電力不足による制約を受けるとの予測もあります。
主要なデータセンター集積地では土地そのものが不足し、拡張が難しくなる地域も出てきています。海外は国土が広く、土地が豊富にあるように見えますが、データセンターの立地に適した場所は実際には限られています。こうした状況は日本においても例外ではなく、むしろ複数の制約が重なることで、海外以上に立地選定が難しくなっています。
日本のデータセンターは東京圏と大阪圏に大きく集中しており、金融・行政・大企業のシステムが集積し、通信バックボーンが整備されているためです。しかし、その一方で土地不足や地価高騰、電力供給の逼迫といった課題が顕在化しています。とくに首都圏ではすでに多くのデータセンターが稼働しており、新規立地の余地は限られています。関西圏でも同様に需要が増加し、電力・土地の両面で制約が強まっています。
データセンターは単に広い土地があれば建てられるわけではなく、大容量の電力が引けること、光ファイバー網が整備されていること、冷却に適した環境や水資源が確保できることなど、複数の条件を満たす必要があります。こうした条件を満たす土地は限られているため、世界的にデータセンターが集中する地域では土地そのものが不足し、価格も高騰しています。
日本は海外と同様の課題を抱えつつ、電力・土地・災害リスクといった追加の制約が重なる「難しい国」です。しかし、冷涼な地域の存在、アジアのハブとしての地理的優位性、高い技術力、安定した治安など、強みも多くあります。これらを活かしながら、産業界・行政・地域社会が協働し、持続可能なデータセンター基盤を構築していくことが求められています。
AIの進化は止まりません。しかし、その進化を支える社会インフラには限りがあります。これからの企業や行政には、技術の最前線だけでなく、電力・水・土地といった“足元の現実”を踏まえた戦略が求められます。AIの未来は、モデルの性能だけでなく、社会インフラといかに共存し、どのように設計していくかによって大きく左右されるでしょう。


