製造業で下請法違反が多発、金型無償保管で勧告相次ぐ

 公正取引委員会がまとめた令和7年度の取適法(旧下請法)勧告状況から、製造業を中心に中小受託取引における不適正行為が広範囲に発生している実態が明らかになった。とりわけ目立つのは、発注が途絶えた後も金型や治具を返却せず、下請側に無償で保管させる行為である。令和7年度に公表された28件の勧告のうち、20件以上が金型無償保管に関する違反で、製造業に根強く残る構造的な課題が改めて鮮明になった。

 取適法が施行された令和8年1月には、東芝グループに対する2件の勧告が同時に公表された。東芝ホクト電子では、電子レンジやレーダーに用いられるマグネトロン(強力なマイクロ波を発生させる真空管)などの製造に必要な金型483個を、下請14社に無償で保管させていた。また、東芝産業機器システムでも、電動機などの製造に必要な金型1,510個を47社に保管させていた。いずれのケースも、発注が長期間停止しているにもかかわらず、保管費用やスペースの負担が下請側に押し付けられていた点が問題とされた。

 自動車部品メーカーでも違反が続発した。東洋電装は受入検査を行わないまま返品を繰り返し、27社に563万円の負担を強いたうえ、907個の金型を無償保管させ、回収費用まで下請に負担させていた。マキタは3,214型、スニックは880個、日幸電機製作所は625個の金型等を無償保管していた。大手メーカーにも波及している。三菱ふそうトラック・バスでは5,694個の金型等を61社に保管させ、棚卸作業まで負担させていた。トヨタ自動車東日本は下請所有の金型440個に加え、一括生産部品777個を下請側倉庫に保管させ続けていた。リョーノーファクトリーでは8,993個、井関農機では19,461個という大規模な無償保管が確認され、金型管理の負担が下請側に集中している実態が浮かぶ。

 金型以外の違反も少なくない。返品の禁止違反では、岩機ダイカスト工業が加工費を含む815万円を、佐藤商事が1,434万円を下請に負担させていた。美里工業や不二サッシでも受入検査を行わずに返品し、送料や仕分け作業まで下請に押し付けていた。代金減額の禁止違反も続いた。Olympicは割戻しや過大な振込手数料を名目に1,727万円を減額し、ジェイテクトは実際の手数料を超える額を控除していた。ヨドバシカメラはリベート名目で1,349万円、杉本電機産業は割戻し等で2,468万円を減額していた。物流分野でも、南日本運輸倉庫が元請管理手数料などを名目に1,896万円を減額していた。

 その他の不当行為として、日精樹脂工業は発注取消しにより原材料費1,267万円を下請に負担させ、スズキ自販大分や福岡ダイハツ販売では代車として自動車を無償提供させる行為が確認された。センコーでは荷積み・荷卸しや長時間の待機を無償で行わせていた。

 2026年1月の取適法施行により、金型の無償保管や協議なき価格据え置きは明確に違法とされた。しかし、令和7年度の勧告状況を見る限り、こうした旧来の慣行は依然として根強い。公正取引委員会は「構造的な問題として重点的に取り締まる」としており、製造業を中心に摘発は今後も続く見通しだ。その一方で、公取委が公表した令和7年度の取適法(旧下請法)勧告状況を見ると、勧告や行政指導が一定の改善効果を上げていることも確認できる。

 勧告を受けた企業では、減額された代金の返還や未払い分の支払いが進み、令和6年度には親事業者149社が下請3,000社超に対し、総額13億円を超える原状回復を実施した。勧告に至らない段階でも、行政指導は年間8,000件を超え、書面交付や支払条件の是正など、日常的な取引慣行の改善が広がっている。

 しがしながら、違反件数そのものは減少していない。令和6年度の勧告件数は平成以降で最多となり、令和7年度も高水準で推移している。とくに金型や治具の無償保管といった構造的な問題は根強く、令和7年度だけでも20件以上の勧告が金型管理に関するものだった。発注停止後の金型返却が遅れ、保管費用や棚卸作業が下請側に押し付けられる状況は、依然として多くの製造業で常態化している。

 価格転嫁をめぐる問題も再燃している。労務費や原材料費の上昇が続く中、協議のない単価据え置きやリベート名目の減額が増加し、買いたたきに該当する事案も確認された。物流分野では、荷待ちや荷役作業の無償化といった不当な負担が続き、運送業者の収益を圧迫している。

 こうした状況を踏まえ、公取委は「構造的な問題として重点的に取り締まる」との姿勢を明確にしている。勧告によって個別案件の是正は確実に進むものの、業界に根付いた慣行の根絶には至っておらず、継続的な監視と企業側の自主的な改善が不可欠だ。取適法の施行後も、金型の無償保管や協議なき価格据え置きは依然として根強い。形式的な法令遵守にとどめず、サプライチェーン全体の健全性を高める取り組みが求められている。

屋外で雨ざらしのまま放置される金型は今も残る