自動車産業のサプライチェーンでは、量産部品の生産に不可欠な金型の保管・管理・廃棄をめぐり、長年にわたり受注側の中小企業に負担が偏る構造が続いてきた。こうした状況を踏まえ、経済産業省は2026年3月上旬、自動車メーカーを対象に自由記述形式の実態調査を実施し、型等取引の実態と課題を把握することを目的とした。背景には、適正取引の推進とサプライチェーン全体の効率化を図る行政方針がある。
調査結果では、金型の所有権が曖昧なまま長期保管されるケース、古い金型の仕様情報が残っておらずリスト化が困難な実態、保管費用の算定根拠が不明確で合意形成に時間を要する点などが明らかになった。また、量産終了後の補給品生産において、少量生産にもかかわらず量産時と同じ単価を求められるといった声も寄せられ、現場の工数増とコスト負担が依然として解消されていない状況が浮き彫りとなった。
こうした課題は、自動車工業会(自工会)がこれまで示してきたベストプラクティスとも重なる。自工会は、サプライチェーン全体での透明性向上、型情報の標準化、適正コストの実現を重要テーマとして掲げ、行政と連携しながらガイドライン整備を進めてきた。しかし、実務レベルでは「型の所在が分からない」「廃棄判断が遅れる」「保管費用の算定が属人的」といった課題が残り、標準化の実装には継続的な取り組みが求められている。
こうした中、東京都金属プレス工業会は令和4年度中小企業新戦略支援事業(特別支援)において、5,000万円規模の「TMSAコネクテッド」プロジェクトを推進し、クラウド型型管理台帳システムを開発した。このシステムは、型の所在・仕様・保管状況を一元的に管理し、リスト化の困難さや情報の散在といった現場課題をデジタルで解消する仕組みを備えている。さらに、廃棄候補型の抽出や保管年限の可視化など、適正取引の判断を支援する機能も特徴である。
TMSAの取り組みは、行政が示す課題認識と自工会のベストプラクティスを現場レベルで実装するモデルケースとなり得る。型管理の透明性向上は、保管費用の適正化、廃棄判断の迅速化、補給品生産の効率化につながり、サプライチェーン全体の負荷軽減に寄与する可能性が高い。
今後は、型廃棄の基準明確化、保管費用算定の標準化、情報管理のデジタル化を行政・業界団体・中小企業が連携して進めることが求められる。TMSAコネクテッドの取り組みは、その実現に向けた重要な基盤として、引き続き大きな役割を果たすだろう。


