経済安全保障推進法をやさしく理解する

 近年、半導体の不足や医薬品の供給遅れ、サイバー攻撃の増加など、私たちの生活や産業を揺るがす出来事が続いています。これらは単なる経済問題ではなく、国家の安全保障に直結する課題として世界的に懸念されています。こうした状況を背景に、日本では2022年に「経済安全保障推進法」が成立しました。この法律は、国の生命線となる物資・技術・インフラ・情報を守り、社会と産業の安定を確保することを目的としています。

 法律の仕組みの一つが、半導体や医薬品、蓄電池など「社会が止まってしまう恐れのある物資」を国が選び、企業に安定供給のための計画づくりを求める制度です。調達先を複数にしたり、一定量の在庫を確保したりすることで、コストだけを優先する調達から、リスクを見据えた調達へと考え方を転換していきます。

 電力、通信、ガス、鉄道、金融など、生活の基盤となるインフラについては、事業者が重要な設備を導入する際に国が事前に安全性を確認する仕組みが設けられました。安全性の判断は、分野ごとに担当する省庁が行い、海外製品への依存やサイバー攻撃のリスクを踏まえて、インフラが攻撃や障害で停止しないように備えるものです。

 安全保障上重要な技術については、特許出願を一定期間公開しないようにできる制度も導入されました。2024年5月から運用が始まった仕組みで、特許情報から技術が海外に漏れるのを防ぐための措置です。AI、量子、バイオ、宇宙といった先端技術は、これからの日本の競争力を左右する分野として国が重点的に支援し、技術流出を防ぐためのルールも整備されています。たとえば、海外企業との共同研究や設備導入の際にリスクを確認する仕組みや、重要な研究成果の扱いを慎重に管理するための基準などです。防御だけでなく、将来の産業を育てるための取り組みでもあります。

 こうした取り組みにより、企業は調達先の見直しや情報管理の強化、海外取引のリスク評価など、経営判断の前提が大きく変わります。中小企業もサプライチェーンの一部として影響を受けるため、規模に関わらず対応が求められます。生活者にとっても、半導体不足による家電や車の価格上昇、医薬品の供給不安、通信障害のリスクなど、日常生活に直結するテーマです。

 経済安全保障推進法は、危機に備えるための法律であると同時に、日本の産業競争力を維持していくための仕組みでもあります。世界の不確実性が高まる中、経済と安全保障を切り離さずに捉える視点がこれまで以上に重要になっています。

経済安保法は日本の産業競争力を維持するための仕組み。