民間宇宙企業スペースワン(東京都港区)が開発した小型ロケット「カイロス」3号機が5日、和歌山県串本町の宇宙港「スペースポート紀伊」から打ち上げられました。しかし、発射から約68.8秒後に飛行が中断され、搭載していた超小型衛星5機は軌道投入に至りませんでした。同社が掲げる「民間単独での衛星打ち上げ成功」は今回も実現せず、原因究明と再発防止が急務となっています。
ロケットは午前11時10分に発射され、当初は順調に上昇しているように見えました。しかし、高度約29キロ付近で自律安全飛行システムが作動し、機体は自動的に破壊措置が取られました。破片は海上に落下したとみられていますが、人的・物的被害は確認されていません。スペースワンによりますと、飛行経路や主要機器に大きな異常は見られず、二重化された安全装置の一系統に異常が発生し、残る系統が破壊を実行した可能性が高いとしています。
カイロス3号機は、天候や衛星電波状況の影響で三度の延期を経て打ち上げられました。搭載されていたのは国内企業や教育機関が開発した超小型衛星5機で、成功すれば民間企業単独として国内初の軌道投入となる予定でした。小型衛星を利用した観測や通信の需要が高まる中、同社は高頻度の打ち上げサービスを掲げており、今回の失敗は事業計画にも影響を与える可能性があります。
打ち上げ後の記者会見で、豊田正和社長は「期待に応えられず残念だが、安全装置が作動したことは設計が機能した結果でもある。得られたデータを次に生かしたい」と述べ、前向きに取り組む姿勢を示しました。今後は詳細なデータ解析を進め、原因の特定と改善策の検討を急ぐとしています。
スペースワンは2018年に設立された民間宇宙企業で、小型ロケット「カイロス」を用いた商業打ち上げサービスを展開しています。キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行などが出資し、技術力と事業基盤を支えています。同社の特徴は、ロケットを自社で製造するのではなく、出資企業の技術を結集して開発を進めている点にあります。ロケット本体はIHIエアロスペースが製造し、キヤノン電子が電子機器や制御系を担当しています。清水建設は日本初の民間専用射場「スペースポート紀伊」を整備し、スペースワンが全体を統合して打ち上げサービスとして提供しています。
カイロスは固体燃料ロケットを採用し、構造がシンプルで準備期間が短いことから、迅速かつ柔軟な打ち上げが可能とされています。同社は契約から12か月以内の打ち上げ、高頻度の運用、低コスト化を掲げ、衛星を必要な軌道へ“宅配便”のように届けるサービスモデルを目指しています。
一方で、これまでの打ち上げはいずれも飛行中断となり、軌道投入には至っていません。固体ロケットは失敗から得られるデータが大きく、段階的な改善が不可欠とされています。スペースワンはこれらの経験を次号機以降に反映させ、民間主導の宇宙輸送サービスの確立を目指しています。日本の宇宙産業が国際競争の中で存在感を高めるためにも、同社の取り組みは重要な意味を持っています。


