東京労働局管内の労働災害発生状況
東京労働局の管内における労働災害の発生状況を見ると、休業4日以上の死傷者数は前年より減少している一方で、死亡災害は増加傾向にあります。2025年10月末時点での統計によれば、死亡者数は27人で前年同期比2人増加しました。これに対して、休業4日以上の死傷者数は7,111人で、前年同期比287人減少しています。「休業4日以上」という区分が用いられるのは、労働安全衛生法に基づき、事業者が労働基準監督署へ報告する義務がある災害の基準だからです。休業1~3日の軽微な災害は、報告義務がなく統計に含まれません。そのため、全国的に統一された基準として「休業4日以上」が採用され、重大災害の把握や比較に活用されています。
この結果を受け、東京労働局は「第14次労働災害防止計画(14次防)」に基づき、災害防止の取り組みを一層強化しています。製造業においては機械災害や挟まれ・巻き込まれ事故が依然として発生しており、労働災害の重要な要因となっています。そのため、製造現場においては全装置の適正な使用、作業手順の徹底、危険源の除去を重視し、事業場に対して安全衛生教育の充実を呼びかけています。とくに中小規模の工場では安全管理体制が十分でないケースも見られることから、監督指導を一層強化しています。
製造業における労働災害の発生状況を年齢別に見ると、60歳以上の高齢労働者での災害発生率が最も高く、とくに転倒災害が顕著です。50代では機械災害や挟まれ・巻き込まれ事故、さらに墜落・転落災害が目立ちます。30〜40代の働き盛り世代でも一定数の事故が発生しており、作業効率を優先する中で安全確認が不十分となるケースが見られます。若年層である29歳以下は件数こそ少ないものの、経験不足や不安全行動が原因となる事故が散見されます。
こうした傾向から、製造業においては年齢層ごとの特性に応じた安全対策が不可欠であり、高齢労働者には転倒防止対策、50代には機械災害防止の徹底、若年層には安全教育の強化など、重点的な取り組みが求められています。
労災が発生した場合には、労災保険制度による補償が適用されます。労災保険は、業務上の災害や通勤災害によって労働者が負傷・疾病・障害・死亡した際に、療養費、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などを支給する制度です。例えば休業が必要となった場合には、平均賃金の約8割が休業補償給付として支給され、死亡災害では遺族に対して遺族補償年金や葬祭料が支給されます。東京労働局は、労災発生時の迅速な補償手続きと周知を進めることで、被災労働者や遺族の生活保障を図っています。
東京労働局は「Safe Work TOKYO」をスローガンに掲げ、年末年始(12月1日から翌年1月31日まで)を労働災害防止強調期間と定めています。この期間には、墜落・転落防止、交通災害防止、化学物質の適正管理、そして製造業における機械災害防止を重点課題として、事業場への呼びかけや安全衛生教育の徹底を進めています。
総じて、死傷者数の減少は一定の成果を示しているものの、死亡災害の増加は深刻な課題です。とくに製造業や高齢労働者を含む主要産業分野においては、安全対策の徹底と労災補償制度の適切な運用が今後さらに重要になります。


