最近、日産のコマーシャルを目にする機会が増えている。新型モデルの投入やブランド発信が活発化しているが、その一方で足元の業績はどのような状況にあるのか。
2025年度の業績見通しでは、通期の営業利益が「損益均衡レベル」にとどまる見込みだ。米国の追加関税や中国市場での販売不振が響き、2025年度上期は売上高5兆5,787億円、営業損失277億円、純損失2,219億円と赤字に転落した。構造改革費用も利益を押し下げている。日産は現在、固定費削減や生産体制の見直しを柱とする大規模な構造改革を進めている。販売不振や中国事業の利益減少が続く中、収益改善への道筋はなお不透明だ。再建の中心となる「Re:Nissan」計画では、2026年度までに営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目指し、固定費と変動費を合わせて5,000億円削減する方針を掲げる。国内外で生産拠点の統廃合が進み、約2万人規模の人員削減が見込まれるなど、過去に例のない再編が進行している。
一方で、日産には強みもある。EV「リーフ」やシリーズ式ハイブリッド「e-POWER」など電動化技術は高い評価を受けており、軽EVからSUV、スポーツモデルまで幅広いラインナップを展開する。北米・欧州・中国に広がる生産・販売ネットワークや、スポーツブランド「NISMO」の存在も企業価値を支えている。ただし、国内販売は新型車不足や競合の強さから低迷が続き、中国事業では現地メーカーとの競争激化で利益率が大きく低下した。生産体制の複雑さや高コスト構造も重荷となり、人員削減に伴う技術者流出の懸念もある。
日産は「強みを活かしながら弱点を克服し、外部環境の変化を機会に変えられるか」が問われる局面にある。技術力とブランド資産を収益に結びつけ、競争力の再構築につなげられるかが焦点となる。
神奈川県内の製造業に波紋
工場閉鎖や生産集約は地域経済にも影響を及ぼす。追浜工場や日産車体湘南工場の生産終了は、地元の中小企業にとって受注減や雇用面での不安材料となる。サプライチェーンの再編により、取引先の選別が進む可能性も指摘されている。日産は2026年度を黒字転換の節目と位置づけており、再建の成否が問われる一年となる。追浜工場は2027年度末、日産車体・湘南工場は2026年度末に生産を終える予定で、数千人規模の従業員が配置転換や転籍、離職の対象となる可能性がある。
県内の中小企業では、慢性的な人手不足が続く中、日産で経験を積んだ技術者の動向に注目が集まる。生産技術、品質管理、設備保全などの専門性を持つ人材は即戦力として期待が大きく、「採用につながれば企業の競争力向上に直結する」との声も多い。行政も支援を強めている。神奈川県や横浜市、川崎市は中小企業向けの相談窓口を設置し、資金繰りや経営相談に対応。国もサプライチェーンへの影響を抑えるため、金融支援や補助金の優先採択などを通じて支援体制を整えている。
日産の国内販売が低迷し、生産体制の見直しが進む中、サプライチェーンを支える中小企業では影響を慎重に見極める動きが広がっている。まず懸念されるのは受注量の減少である。日産向けの部品比率が高い企業では、生産計画の縮小が売上に直結する。自動車産業は単一モデルの生産停止でも影響が大きく、複数年にわたる投資回収計画の見直しを迫られるケースもある。とくに金型、治具、表面処理などの専門加工業では、設備投資の判断が難しくなっている。
販売低迷が長期化すれば、サプライチェーン全体の価格交渉力にも影響が及ぶ。大手メーカーのコスト削減圧力が強まれば、中小企業の利益率は一段と圧迫される。原材料価格の高止まりが続く中、価格転嫁が進まない企業ほど影響は深刻である。日産の構造改革の動きは企業内部にとどまらず、地域経済にも波及する。人材の流動化やサプライチェーンの再編が進む中、地元企業にとっても重要な局面を迎えている。
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