日本統治時代の建物が文化遺産として再生

台湾特派員:諸治隆仁

 戦前の日本統治時代の建築物の多くが残されている台湾。台湾の総統が執務する総統府はかつての台湾総督府を改修したものである。戦時中の1945年、台北も米軍の大規模な空襲にあい、被弾。建物の一部が大きく破損したものの、修復が施され、現在は台湾総統および副総統の執務室、総統・副総統の官房機関、中華民国総統府が置かれている。こうした建物は総統府以外にも台北市内には数多く現存している。

台北・博愛地区は日本の霞ヶ関官庁街に相当

 台北市中正区の中心は博愛地区と呼ばれており、台湾の行政を担う主要官公庁が集中している。日本の霞ヶ関をイメージするとわかりやすい。博愛地区には総統府をはじめ、日本統治時代、官公庁として利用されていた建物が多い。台湾の最高司法機関である司法院がある司法大厦(司法ビル)は日本統治時代に台湾総督府高等法院だった。また、各種国家機関や公務員の監督・調査のほか、国家予算の会計監査を行う監察院は台北州庁舎だった建物が利用されている。

総統府は、パスポートを持参すれば平日午前中に予約なしで見学できる

 博愛地区には、このほかにも日本統治時代の建物が数多く残っている。例えば、かつて東アジア最大規模の病院であった台北帝国大学医学部附属医院は、現在は国立台湾大学附属病院(台大醫院)として利用されている。また、台湾における女子高等教育の中心であった台北女子高等女学校の建物は、現在も台湾の女子校トップである台北第一女子高級中学の校舎として使われている。これらの建物は外観こそ当時の姿をほぼ保っているが、内部はリノベーションされ、現代的な機能を備えている。近年では、日本統治時代の建物を観光資源として活用する事例も多く見られる。

官民が連携して進める歴史的建造物の保存・活用

 台北市内には、日本統治時代に建てられた総督府職員や教員、軍人のための官舎が数多く残っている。台北市政府文化局は「旧家屋文化運動プロジェクト」を推進し、取り壊しを免れた日本式建築を文化遺産として保護・保存している。かつて台北市錦町と呼ばれた地域の「錦町日式宿舎群」も、このプロジェクトによって当時の姿を取り戻し、現在では多くの人々が訪れる観光スポットとなっている。台北市内では毎週末さまざまなイベントが開催されているが、近年は戦前の日本統治時代にタバコや酒類の生産工場として使われていた建物が会場となることが多い。

 台北市信義区にあった台湾総督府専売局松山煙草工場はリノベーションされ、「松山文化創意園区」として文化施設へと生まれ変わった。かつて台湾産業の近代化をリードし、労働者の衛生と安全を重視したモデル工場であったこの施設は、現在も倉庫やボイラー室のほか、当時の設備の外観などを残しながら、デザインミュージアムやカフェなどに転用されている。ここでは11月22日、23日の2日間、1970年代、80年代の日本車が展示され、多くの来場者がその姿をスマートフォンに収めていた。

松山文化創意園区のイベントで、日本の旧車に大勢の来場者がカメラを向ける

 一方、台北市中正区にあるかつての台湾総督府専売局台北酒工場の工場建屋はリノベーションされ、「華山1914文化創意産業園区(華山1914)」として、再開発が進められた。現在、同所も文化施設となっており、毎週、多くのイベントが開催されている。

 日本関連のイベントが実施されることも少なくない。11月22日、23日の2日間、秋田県が同所で「2025日本・秋田県観光物産展」を開催。会場では秋田牛やシャインマスカット、白神ねぎ、りんごの試食が行われ、その魅力をアピール。来場者はそのおいしさに舌鼓を打った。

秋田県は華山1914で観光イベントを開催し、パナソニックが製品PRを行った。

11月から日本産食品の輸入規制が完全撤廃

 台湾は2025年11月19日、日本政府に対して日本産食品の輸入規制完全撤廃を通告し、同月21日から施行した。この結果、日本からの水産物を含む全ての食品は、産地証明書や放射性物質検査報告書を提出することなく輸入が可能になった。

 台湾は日本の農林水産物・食品の主要な輸出先の1つである。現在、外国為替レートは台湾ドルに対して円安傾向が続いているため、この規制撤廃は日本産農林水産物・食品の輸出に追い風となることが期待される。