国産レアアースの行方

 近年、スマートフォンやパソコン、電気自動車といった電子端末機の価格がじわじわと上昇している背景には、世界的なレアアース調達の不安定化があります。レアアースは高性能磁石や半導体部品に欠かせない素材であり、その供給が滞ると製品価格に直接影響します。日本はレアアースのほぼ100%を海外に依存してきました。

 とくに中国依存が高く、レアアースは採掘だけでなく精製工程まで含めると世界供給の6〜7割を中国が握っています。日本が輸入するレアアースも量ベースで約60%前後、なかでもネオジム、ジスプロシウム、テルビウムといった“戦略元素”(産業に不可欠で代替がきかない重要金属)は80〜90%以上を中国に頼ってきました。これらの戦略元素は高性能磁石や半導体部品の製造に欠かせないため、供給が不安定になると主要部材の価格が上昇し、製造コスト全体に波及します。す。

 こうした状況を踏まえ、日本は現在、レアアースの供給源を多角化し、国内外で安定的な調達体制を築くための取り組みを加速させています。日本と米国は2025年にレアアース供給協定を締結し、採掘から精製、備蓄までサプライチェーン全体で協力する枠組みを整えました。また、日本企業は豪州や米国、ベトナムなどの鉱山開発に積極的に参画し、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の出資によって長期的な供給契約を確保しやすくなっています。これにより、中国依存を減らし、国際的な供給リスクを分散する狙いがあります。

 一方で、日本の排他的経済水域(EEZ)内に眠る「国産レアアース」への期待も急速に高まっています。なかでも注目されているのが、南鳥島沖の水深6000メートル級の海底に広がるレアアース泥です。ここにはネオジムやジスプロシウムなど、EVモーター用磁石に不可欠な元素が高濃度で含まれており、世界でも有数の埋蔵量を持つとされています。

 日本の海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、南鳥島(東京都・小笠原村)沖の水深約5600〜6000メートルの海底から、このレアアース泥の回収に成功しており、研究船「ちきゅう」による試験採取も進んでいます。今後は2026年に初期処理テスト、2027年以降には本格的な採掘試験が予定されており、商業化が実現すれば日本は世界でも珍しい「レアアースの自給可能国」へと大きく前進することになります。

 もっとも、深海採掘は技術面・コスト面のハードルが高く、環境への影響評価も慎重に進める必要があります。また、海外鉱山の開発も地政学リスクを常に抱えています。こうした状況を踏まえ、日本は国産資源の開発、海外調達の多角化、リサイクルの強化といった複数の手段を組み合わせ、レアアースの安定供給と産業競争力の維持を目指しています。

世界でも稀な“レアアース自給可能国”へ期待高まる。