半導体の次は電池へ 台湾発・全固体電池が世界市場で存在感

台湾特派員:諸治隆仁

 半導体で世界のトップを走る台湾。TSMCは2026年2月10日、同年1月の月次売上概況を発表した。売上高は約4,012億6,000万台湾ドルで、前年同月比約37%増。現在のレート、1台湾ドル4.92円で計算すると、約1兆9,742億円に上る。これは日本の主要製造業の単月売上を大きく上回る規模である。その台湾が、絶好調の半導体に続く戦略分野として打ち出しているのがエネルギー分野だ。中でもプロロジウム・テクノロジー(輝能科技、台湾・桃園市)が量産化に成功した全固体電池は電気自動車(EV)が抱える「航続距離」「充電時間」「発火リスク」という3つの課題を解決できる可能性があり、注目が高まっている。

全固体電池が注目されている理由

台湾のEVバスに搭載されているチタン酸リチウム電池

 EVに搭載されているリチウムイオン電池内部の電解液は有機溶媒であり、燃えやすく、過充電で電池が熱を持つと、火災につながる恐れがある。しかし全固体電池は不燃性・難燃性の固体を利用しているため、発熱による火災リスクは大きく低減することが可能となる。

 台湾で市内を循環運行しているEVバスでは改良型リチウムイオン電池といえる「チタン酸リチウム(LTO)電池」が搭載されているケースが多く見られる。このLTO電池は約10分から15分で完了する超・高速充電を実現し、熱暴走しにくいことから安全性も高められている。しかし、課題となるのがエネルギー密度の低さ。つまり、充電時間は短くても航続距離を稼げないということだ。そのため、長距離路線でのEVバスは導入されていない。すなわちLTO電池は短距離・高回転運用に適した電池といえる。

 今後、EVの普及拡大を図っていく上で足枷となるのは、リチウムイオン電池の「充電待ち時間」と「航続距離」の問題。その解決策として期待されているのが全固体電池だ。全固体電池の固体電解質は熱に強く、高電圧・大電流を扱えるため、超・急速充電が可能になる。その上、リチウムイオン電池と比較して、同じサイズ・重量であってもエネルギー密度を50%から80%向上させることができるとされており、航続距離の大幅向上が期待できる。このほか、全固体電池はリチウムイオン電池が苦手とする寒冷地の極端に低い気温への耐性もある。こうした全固体電池の特性から、自動車メーカー、自動車メーカーのサプライヤーが開発に取り組んでいる。

プロロジウム、仏・ダンケルクでのギガファクトリー着工を発表

 TSMCが売り上げ概況を発表した2月10日、台湾の全固体電池メーカー、プロロジウム・テクノロジーはフランス北部ダンケルクにおけるギガファクトリーの建設着工を発表。この工場では第4世代の全固体電池である「リチウムセラミック全固体電池」を、2028年から量産する予定だという。プロロジウム・テクノロジーはホンハイ出身のビンセント・ヤン氏が2006年に設立した全固体電池メーカー。同社には自動車メーカーの独メルセデス・ベンツ、電池材料メーカーの韓・ポスコ、事業提携を通じて日本の九州電力などが出資している。

 全固体電池の技術開発にはプロロジウム・テクノロジー以外にも日本のトヨタ、米国のクォンタムスケープ、中国のCATLなどが取り組んでおり、試作・パイロットラインの段階までには辿りついている。しかし、GWh(ギガワットアワー)級での量産体制に到達している企業は現時点でプロロジウム・テクノロジーだけだ。同社の発表によれば、2024年、すでに台湾の桃園市でGWh級工場を稼働させており、量産実績として、累計75万個超のセルを出荷しているという。

今回発表されたプロロジウム・テクノロジー仏ダンケルク工場の建設計画とスケジュールは次のようになっている。

・2028年: 第1期工場の第1段階が完了。第4世代電池(0.8 GWh)の量産開始。

・2030年: 第1期工場の第2段階が完了。4 GWhのフル稼働を予定。

・2032年: 第2期工場が完了。総生産能力は12 GWhに到達。

また同社では市場需要に応じ、最大48 GWhまで拡張可能な用地を確保済みであることも明らかにしている。

台湾企業主導で実用化を進めている第4世代全固体電池技術

プロロジウム・テクノロジーは仏ダンケルク工場建設着工発表に先立ち、2026年1月、米ラスベガスで開催されたCES2026において、第4世代全固体電池を披露し、競合他社に対して、技術面での優位性を印象づけた。この第4世代は超流動化無機電解質、セラミックセパレーター、シリコン負極という液体系と固体系の長所を融合した構造とすることで、「高エネルギー密度」「超・急速充電」「非可燃安全性」「量産プロセスの確立」というポスト・リチウムイオン電池の完成形に最も近いといえる段階にたどり着いたと評価された。

プロロジウム・テクノロジーはTSMCに続く「台湾発世界企業」となるか

 全固体電池の技術・生産において、頭ひとつ抜け出した台湾メーカーのプロロジウム・テクノロジーがEVに搭載される次世代電池という分野でTSMCに続く「次の台湾発世界企業」となる可能性を十分に秘めているといえるのではないだろうか。