
中国特派員 斉海龍
近年、「地元の県城に戻るか、それとも大都市に残るか」という進路選択において、若者たちはこれまでとは異なる答えを出し始めている。交通網やデジタルインフラ、公共サービスの整備が進み、かつて“目立たない存在”だった県城は着実に変化を遂げつつある。一方で、大都市では住宅価格の高騰や激しい競争、生活コストの上昇が若者の負担となり、「成功とは何か」「どのように生きたいのか」を改めて問い直す契機となっている。より生活感があり、自分らしく暮らせる場所として県城に目を向ける若者が増えている。
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県政府の所在地を指す

中国青年報社社会調査センターが問巻網(wenjuan.com)と共同で実施した最新調査によれば、回答者の75.6%が「近年、県城の魅力が明らかに高まっている」と感じている。その理由として、生活コストが低く精神的なプレッシャーが少ないこと、生活リズムが緩やかで人間らしい温もりを感じられることを挙げている。また、83.9%が「身近に県城へ戻って働く若者がいる」と答え、そのうち34.3%は「人数は比較的多い」と感じている。注目すべきは、名門大学出身の修士・博士課程修了者の中にも、北京・上海・広州といった大都市を離れ、県城に定住する動きが見られる点である。
『中国県域高質量発展報告2023』によれば、中国には約1,866の県級行政単位が存在し、国土面積の約90%を占め、人口比では52.5%、GDPでは38.3%を担っている。市轄区も行政上は県と同格であるため、これを含めると全国の県級行政単位は2,800以上に達する。県城はすでに、中国の人口配置と地域経済を支える中核的存在となっている。
さらに『中国郷村振興総合調査報告2023』は、県(市)が出稼ぎ労働者や帰郷就業者を受け入れる割合が年々上昇し、すでに全体の33.67%に達していると指摘している。すなわち、全国で都市から戻って働く人のうち、県城や市に定着して就業する層が着実に増えているのである。こうした「就地就近就業」や「地元定着型雇用」は、もはや一時的な現象ではなく、中国社会における新たなトレンドとして定着しつつある。
若者が県城に魅力を感じる背景には、住宅価格や生活費の低さによる経済的なゆとり、緩やかな生活リズムと地域コミュニティの温かさ、交通網やデジタル環境の整備、そして都市的なライフスタイルや新しい産業の浸透がある。一方で、県城生活には賃金水準や雇用の選択肢の少なさ、教育・医療資源の不足、情報や技術へのアクセスの制約、娯楽や文化施設の限界、キャリア成長の上限、人間関係の煩雑さといった課題も残されている。
結局のところ、県城に戻るか大都市に残るかという選択は、単なる地理的な移動ではなく、人生観や価値観の移動である。安定を重視する人もいれば、競争と成長を求める人もいる。誰かの安定を羨む一方で、その人はまた別の誰かの可能性を羨んでいるのかもしれない。この時代において、「選択できること」そのものが、若者にとって最大の自由なのだろう。

