
中国特派員 斉海龍
2026年1月19日、中国国家統計局は「2025年国民経済および社会発展統計公報」を公表し、その中の人口データが広く注目を集めた。統計によると、2025年の中国の出生数は792万人、出生率は5.63‰と、いずれも中華人民共和国成立以来の最低水準を記録した。年間死亡者数は1131万人、死亡率は8.04‰で、人口の自然増加率は4年連続でマイナスとなり、総人口は引き続き減少し、高齢化の進行が加速している。これは、中国が長期的かつ構造的な人口減少局面に突入したことを示しており、その歴史的意義は通常の景気循環の変動をはるかに超える。

出生率
平均寿命研究者の易富賢は、2025年の出生人口規模が清の乾隆三年(1738年)とほぼ同水準であると指摘している。当時、中国の総人口および出生人口はいずれも世界人口の約3分の1を占めていたが、現在では中国の総人口は世界の16%未満、出生人口は約6%に過ぎない。「世界の工場」と称される中国は、ほぼあらゆる商品を生産しているにもかかわらず、もはや自国の人口を補充できない社会へと変わりつつある。この対比は単なる人口統計の変化ではなく、中国が“人口大国”としての歴史的役割を終え、新たな国家フェーズへ移行しつつあることを象徴している。
歴史を振り返ると、中国の人口政策および人口予測は長らく強い楽観主義に基づいていた。2007年、国家人口・計画生育委員会は300人以上の専門家が2年をかけて作成した「国家人口発展戦略に関する研究報告」を発表し、中国の人口は2033年前後に約15億人でピークに達すると予測した。さらに2016年に二人っ子政策が全面解禁された際には、当時の国家衛生・計画生育委員会の専門家が出生率は2018年に2.09のピークに達すると予測した。しかし、実際の推移は予測とかけ離れたものだった。2016~2017年の平均出生数は約1750万人、2021年には1062万人、2022年には956万人へと急減し、その後も減少が続き2025年には792万人にまで落ち込んだ。わずか8年間で新生児数は半減以上となり、人口ピークは予測より10年以上早く到来しただけでなく、出生人口の総数も推計を約1億人下回った。これは従来の人口予測モデルが、社会行動の変化や制度的フィードバックの影響を大きく見誤っていたことを示している。
出生人口統計をめぐる論争も浮上している。易富賢は、厳格な計画出産政策が実施されていた時期には、地方政府で「超過出産の未申告」が生じ、その結果、公式統計が過小に計上され、後に上方修正される傾向があったと指摘する。しかし、2016年に生育制限制度が廃止され、国家が出生数を制度的に制限しなくなった後も高い出生数が維持されたことは、一部の年において出生人口が体系的に過大推計されていた可能性を示唆している。
新型コロナ後の出生数の断崖式低下は、潜在していた統計上の偏差が一気に表面化した結果である可能性がある。学界では見解が分かれているものの、地方政府の業績評価インセンティブや戸籍制度の構造的歪み、教育・ワクチン統計と出生統計の長期的不整合といった要因は、この仮説を検討する十分な根拠を示している。
しかし、出生率低下の決定的要因は統計問題ではなく、若年層の婚姻・出産意欲の構造的な縮小である。2024年の中国の婚姻登録数は610万組に急減し、前年から約20%減と過去最大の落ち込みを記録した。婚姻は通常、出生率の重要な先行指標であり、この変化は今後の出生人口がさらに減少することを示唆する。同時に、中国の育児コストは極めて高い。調査によれば、子ども1人を高校卒業まで育てる平均費用は約53.8万元に達し、1人当たりGDPの6.3倍に相当する。これは米国や日本を大きく上回る水準だ。高い住宅価格、激しい教育競争、社会保障の不確実性が重なる中で、出産は高リスクの家計投資判断となっている。
近年流行している「四不青年」(恋愛しない、結婚しない、住宅を購入しない、子どもを持たない)という言葉は、若者が経済の将来状況や社会的流動性に対して抱く信頼の低下を象徴する社会心理的表現である。
構造的観点から見ると、中国の少子化は単一要因によるものではなく、政策の後遺症、経済的圧力、制度への信頼危機が重なった結果である。長期にわたる計画出産政策により育齢女性人口の基盤が大幅に縮小しており、仮に出生率が持ち直したとしても、出生人口の規模が短期間で回復することは難しい。さらに、婚姻制度の高コスト化、女性にとっての出産とキャリアの衝突、育児負担の家庭内集中といった構造的な問題が、生育意欲を一段と低下させている。
人口減少と高齢化の同時進行は、中国の社会制度に深刻な影響を及ぼす可能性がある。中国は高所得国への移行を完了する前に深度高齢社会へ突入する恐れがあり、典型的な「未富先老」のリスク経路に直面している。富裕社会のライフスタイル選択として少子化が進んだ日本とは異なり、中国の出生率崩壊は、経済的不安と制度への信頼欠如という二重の要因が重なって生じている点に特徴がある。
最終的に、中国の人口問題の核心は「生むか生まないか」という個人の選択ではなく、若年層が将来への社会的信頼を得られるかどうかにある。経済的見通し、社会保障、制度的公平性への信頼が回復しない限り、財政補助や政府主導の対応によって出生率の低下を改善させることは難しく、むしろ社会的反発を強める可能性すらある。他国の少子化のプロセスと比べると、中国は強力な人口政策によって出生構造が深く規定され、短期間で人口減少局面に突入した唯一の超大国であり、その人口転換は世界史的な意義と制度的示唆を持つ。

