トヨタ佐藤社長が退任 自工会会長職に専念へ

 トヨタ自動車は2026年2月6日、佐藤恒治社長が4月1日付で退任し、後任に(こん)健太(けんた)執行役員が就任すると発表した。佐藤氏は同日付で副会長に就任し、現在務める日本自動車工業会(自工会)会長としての活動に専念する。自工会は国内完成車メーカー14社が加盟し、国内生産約780万台(2024年)を支える業界団体で、政府との政策協議や国際交渉の窓口を担う。カーボンニュートラル対応やサプライチェーン強靱化など課題が山積する中、佐藤氏が業界団体の代表として指揮を執る体制が強まる。

 佐藤氏は1992年に入社し、2023年4月に豊田章男会長の後任として社長に就任した。就任後のトヨタは、2024年度の世界販売が1120万台と過去最高を更新し、営業利益は5兆円規模に達した。電動化では2030年までにEV・電池関連へ5兆円超を投資する計画を掲げ、ハイブリッド車(HV)を含む電動車販売は年間600万台規模に拡大。ソフトウェア開発ではウーブン・バイ・トヨタを中心に次世代アーキテクチャの構築を進め、車両のソフトウェア更新(OTA)や自動運転技術の開発を加速させた。

世界販売が1120万台と過去最高を更新し、営業利益は5兆円規模に達した。

 一方、半導体不足や物流混乱、原材料価格の高騰など外部環境は不安定で、事業基盤の維持と成長戦略の両立が求められていた。佐藤氏は自工会会長に加え、経団連副会長も務めており、政策提言や国際交渉の場に立つ機会が増えていた。自工会は2035年の新車電動化目標やサプライチェーン支援策など重要案件を抱えており、トヨタ社長職と業界団体の役割を兼務することが難しくなったとみられる。トヨタは今回の退任について「役割分担の明確化」を理由に挙げ、佐藤氏が業界全体の課題に専念できる体制を整えると説明した。

 後任の近氏は1991年入社。トヨタおよびウーブン・バイ・トヨタで財務責任者(CFO)を務め、収益構造の改善に取り組んできた。トヨタの2024年度の設備投資額は1兆7千億円、研究開発費は1兆3千億円と高水準が続いており、財務面での判断がより重要になる。トヨタは「財務基盤の強化に実績がある」として近氏の起用理由を説明し、電動化投資やソフトウェア開発を支える財務体制の構築を期待する。

 6月の株主総会で取締役人事が承認されれば、佐藤氏は代表権を失い、近氏が代表権を持つ体制となる。トヨタは新体制のもと、電動化戦略の実装やソフトウェア領域の強化を進める方針だ。業界団体での佐藤氏の活動と合わせ、日本の自動車産業の競争力強化に向けた動きが注目される。

日本自動車工業会と業界団体の関係図