タイの産業展示会「METALEX 2025」開催、賑わいは景気の反映か期待の表れか

タイ特派員 齋藤正行

東南アジア地域最大規模と評される工作機械および金属加工の展示会「METALEX 2025」が、11月19日から22日まで、バンコクで開催された。主催者のRX Tradexは開催前、「およそ50カ国から3000以上のブランドが出展し、10万人の来場者が見込まれる」と発表。前年並みの盛況が期待されていた。実際の会場でも、これまで同様の賑わいが維持されていた印象を受けた。

とかく目立つ「常連企業」

 METALEXのブース出展は、多くが前年の開催時に予約されるため、ブースの数や大きさがその年の景気を反映しているとは言い難い。その規模はむしろ、「次回に向けた業況感(期待感)」を示すものといえる。 そのため、より正確な評価には来場者が会場を巡って得た印象が参考となる。多数の意見を集めたわけではないが、共通して聞かれたのは「ブース規模を拡大した企業が目立った」といった声だった。大規模なブースが目についたのは確かだった。FA機器が大型のため展示に広いスペースが必要、といった事情が察せられるブースもあれば、商談スペースを広く確保したというブースもあった。業績伸長を反映したブース拡張か否かの見極めは難しい。

 METALEXには毎年出展する「常連企業」が数多く存在する。メインエントランス周辺に大きなブースを構えるのは、例年どおりの日系の商社やメーカーだ。日本人来場者にとっては、変わらぬ光景に「安心感」を覚える場面でもある。ただ、それがタイ製造業における日系企業の存在感をそのまま示しているかどうかについては、慎重な見方も必要だろう。常連である日系商社の一社も、ブースを拡張していた。正面カウンターで入場手続きを済ませると、同社のブースが目の前に広がる。広い商談スペースにはちょうちんが飾られ、浴衣姿のタイ人女性が進行役を務めるなど、祭りのような雰囲気が演出されていた。

 商談が成立すればこうした演出も効果的といえる。しかし、一部の来場者からは「演出の方向性に違和感がある」との声も聞かれた。タイは現在、シリキット王太后の逝去に伴う服喪期間中で「服喪にふさわしい言動」が求められており、厳しめの意見が出やすい。

参加が戸惑われる費用感

 会場の隅で売れ残る小さなスペースなど、開催直前は「叩き売り」の状態とも聞く。そのようなお得なスペースをタイミング良く押さえ、効率的な営業を展開する企業も見受けられる。会場の中央であっても人がまばらな一画があれば、会場の隅であっても集客できている一画がある。日系企業に関しては、「Japan」や「Tokyo」といった看板を掲げた、日本の公的機関が広いスペースを借りて複数の中小企業に分配するブースが目についた。出展企業にかかる費用的な負担が軽くなる。

 「助成や支援がないと参加が難しい」という声は中小企業だけでなく、大手からも聞かれる。例えば商社であれば、取扱メーカーから費用を集めてスペースを確保するのが一般的だ。出展はどの企業に対しても、それなりの負担を強いる。一方、会場の隅に残る小規模スペースは開催直前に「かなり」値引きされるようで、そうしたスペースを効率的に活用して営業を展開する企業が必ずある。会場中央でも人が少ない一角がある一方、隅でも集客に成功している例がある。

 タイで「景気のバロメーター」とされるのは自動車(生産台数)と観光(インバウンド)。前年のMETALEX開催時と比べると、自動車も観光も前年割れの状況で、大きな下落はないものの回復には至っていない。METALEXは毎年のように「来年の回復を予兆している」と評価されるが、持ち上げ過ぎの感がある。むしろ「不景気を感じさせない盛り上がり」が評価されるべきだろう。これまでメインエントランス周辺に広いブースを構えていた、日系顧客を多く抱える有力地場商社が、今年は会場外の通路わきに数平米の小規模ブースを出すにとどまった。ある企業がブースを拡張すれば、別の企業が縮小や撤退を選ぶ場合もある。気にすべきはむしろ、撤退や規模縮小の企業の動向なのかも知れない。

「METALEX 2025」は、東南アジアにおける工作機械・金属加工分野最大規模の展示会として広く注目されている。