ホンダは、2026年3月期連結決算において、1957年の上場以来初となる最終赤字を計上した。最終損益は4,239億円の赤字、営業損益は4,143億円の赤字となり、前期の黒字から大きく減益した。今回の赤字は、電気自動車(EV)事業に関する戦略見直しに伴う損失を一括計上したことが主因である。同社はこれまで、北米市場を中心にEVの開発・生産体制を強化してきた。しかし、足元の市場環境は当初想定と乖離し、需要の伸びが鈍化したことから、複数のEVプロジェクトの中止や計画変更を決定した。これに伴い、関連資産の減損処理や契約見直し費用などが発生し、1兆4,500億〜1兆5,700億円規模の損失を計上した。
もっとも、こうした大規模な損失計上に至った背景には、市場動向の変化を十分に織り込めなかった経営判断の甘さも指摘されている。北米でのEV需要の減速は2024年頃から兆候が見られていたものの、同社は当初計画を維持し、投資規模の縮小やプロジェクトの再評価が後手に回った。結果として、戦略転換のタイミングが遅れ、減損額が膨らんだとの見方がある。三部敏宏社長は決算説明会で、「市場環境の変化に対応するため、将来に向けた損失を早期に整理した」と述べ、経営判断として戦略転換を進めたことを説明した。また、「柔軟な事業運営を行うための前向きな措置である」とし、今後の収益基盤の再構築に意欲を示した。
同社はこれまで、2040年に四輪車の電動化を完了する方針を掲げていたが、今回の決算を受け、EVへの集中投資を一部見直す。カナダで計画していたEV工場建設は凍結し、ハイブリッド車(HV)を中心とした商品ラインアップの強化に重点を移す方針を示した。2029年度までにHVを15車種投入する計画で、需要動向に応じた柔軟な電動化戦略を進める。一方、売上高は21兆7,966億円と前期比0.5%増を確保した。二輪事業は引き続き堅調で、アジア市場を中心に販売が伸びた。EV関連の損失が一時的に利益を圧迫したものの、基礎的な事業体力は維持されている。
2027年3月期の業績見通しについては、営業利益5,000億円、最終利益2,600億円の黒字を予想している。EV関連の減損が一巡することに加え、四輪・二輪両事業の収益改善を見込む。今後は、電動化と内燃機関技術の双方を活用し、地域ごとの需要に応じた商品展開を進める方針である。今回の赤字計上は、同社の電動化戦略における大きな転換点となる。ホンダは、事業環境の変化を踏まえた柔軟な経営判断を行い、持続的な成長に向けた体制整備を進めるとしている。


