一般社団法人東京都金属プレス工業会(東京都墨田区両国、増田靖治会長)の今年の通常総会では、これまでにない新しい試みとして、会長挨拶にAIを活用しました。スクリーンには架空のニュース番組が映し出され、女性キャスターがリアルタイムで「総会の様子をニュースとして紹介する」という演出で進行しました。キャスターが事前に会長挨拶の原稿を“入手した”という設定で、落ち着いたトーンでメッセージを読み上げると、会場からは驚きと笑いが交じった温かい反応が寄せられました。単なる代読ではなく、AIならではの演出を取り入れたことで、参加者の関心を引きつける新しいコミュニケーションの形が生まれたと言えます。
近年、生成AIの急速な発展により、企業活動のさまざまな場面でAIが活用されるようになってきました。その中でも注目されつつあるのが「AIによる挨拶」です。しかし、2026年時点では、企業トップや団体代表者が公式な場でAIアバターに挨拶を代読させる事例は、まだごく少数にとどまっています。トップメッセージは責任の所在が明確であるべきという考えが根強く、誤解や炎上リスクを避けたいという慎重姿勢が背景にあるとみられます。
一方で、AIが挨拶や案内を担う場面は現場レベルで急速に広がっています。小売業ではローソンがAIロボットを導入し、来店客への挨拶や会話を自動化しています。イオンもAIアシスタントを多数の店舗で活用し、接客品質の向上を図っています。また、電話対応ではAIボイスボットが普及し、岐阜県の自動車学校では高齢者講習の受付をAIが担うことで、対応時間の大幅削減につながっています。
企業内部でもAI活用は進み、社内問い合わせや情報検索をAIが支援する仕組みが定着しつつあります。さらに、マスメディアではAIアナウンサーがニュース読み上げを担当するケースが増えており、AIが“情報を伝える存在”として社会に受け入れられています。とくにニュースAIは、プロのアナウンサーの音声データを学習し、文章構造の解析やアクセント辞書を用いたイントネーション調整を行うことで、自然で聞き取りやすい読み上げを実現しています。こうした高度な技術の普及により、「AIが挨拶する」こと自体はすでに一般化し、社会的な抵抗感も着実に薄れつつあると言えます。
現時点ではまだ先進的な取り組みではありますが、AI挨拶は確実に次のステージへ向かっています。産業界全体がAI活用を前提とした運営へ移行する中で、代表者挨拶のAI化も、近い将来“当たり前”の選択肢となるのかも知れません。


