
ベトナム特派員 高橋 正志
GDP10%成長を掲げた国家ビジョン
第14回ベトナム共産党全国大会が2026年1月19日~23日に首都ハノイ開かれた。次期に当たる2026~2030年の国の方向と指導体制を決める、5年に一度の国家的イベントだ。全国の党員560万人を代表する1586人が出席し、第14期の党中央執行委員会の200人が選ばれ、今後5年間の指導部が決定した。党序列1位の書記長は現職のトー・ラム氏が続投。序列2位のルオン・クオン国家主席と3位のファム・ミン・チン首相は退くことになった。この2つのポストは3月15日予定の国会議員選挙を経て、4月6日から開かれる予定の国会で決まる見込みだ。
今後の方針の目玉は、数値で示された野心的な国家ビジョンと経済目標である。2030年に「上位中所得国」、2045年には「高所得の先進国」を目指す。つまり、日本や欧米諸国と肩を並べる存在になる。そのため、2026~2030年の年平均GDP成長率を少なくとも10%とし、2030年の1人当たりGDPを8500USDとする。2025年のGDP成長率は8.02%、1人当たりGDPは5026USD(予測値)で、どちらも勢いよく伸びている。これら目標の数値は、「達成は非常に難しいが不可能とは言えない」との印象を受ける。
人口ボーナスの終わりが迫るベトナム
この成長戦略の背景には避けて通れないベトナムの悩みがある。それは若い労働力で知られるこの国の「高齢化社会への移行」だ。国連人口基金(UNFPA)の推計によれば、ベトナムは2036年までに65歳以上人口が14%を超え、「高齢社会」に突入する。また、2007年に始まった人口ボーナス期は2039年に終了するとも予測された。つまり、人口構造が変化する前に国力を一段階引き上げ、とくに最初の5年はスタートダッシュで2桁成長を取り込む。政府にとって今後10~15年は、若くて豊富な労働力を活用できる最後の期間かもしれないのだ。
製造・加工業のGDP比を約28%、デジタル経済の寄与を約30%とする数値目標が明示され、生産性では全要素生産性(TFP)寄与を55%超、労働生産性の年成長率を約8.5%とした。これらは産業構造と労働者を「量」から「質」に転換し、下請け仕事の単純労働から高付加価値産業のクリエイティブワークに変えるためだろう。資格・証明書を持つ労働者比率を35~40%へと高めて、平均寿命を約75.5歳、健康寿命を少なくとも68歳へ引き上げることも盛り込まれた。労働人口が減少しても、1人当たりの付加価値を高めて、長く元気に働いてもらうための布石とも考えられる。
具体的な方法としては、制度改革、人材育成、インフラ整備の3つを「戦略的突破口」と位置付けた。制度面では中央から地方への権限委譲(分権化)や地方の自律性と説明責任の強化、人材育成は人事・教育制度の刷新やとくに先端技術分野での人材教育、インフラは複合一貫輸送(マルチモーダル輸送)、デジタルやグリーン基盤の整備、気候変動適応など幅広く構築する。
これらの実現には、ベトナムの民間企業の協力が欠かせない。党大会では昨年5月の政治局決議でも示されたように、「民間企業は成長の最も重要なエンジンの1つ」と改めて確認された。トー・ラム氏も「国民一人ひとりや民間企業の活力が国を豊かにする」と語った。社会主義国家であるベトナムにおいて、政府や党トップが「民間重視」を掲げることは画期的な動きといえる。
今年は、市場経済を導入したドイモイ政策から40年の節目にあたる。この間に多くの民間企業が大きく成長し、GDP成長率10%の達成に欠かせない存在であることが改めて証明された形だ。党大会で示された数値目標や方針は、単なる理想論ではなく、ベトナムが直面する現実への強い危機感の表れでもある。これらの方針がどのような形で具体化していくのか。ベトナムの動向を注視していきたい。
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