2030年、東京都の就業構造はどう変わるのか

 東京都の将来推計によれば、都内で働く人の数は2030年に1,046万1,000人でピークを迎え、その後は緩やかに減少していく見通しです。2035年には1,032万6,000人、2040年には999万7,000人まで減るとされています。ここでいう「働く人」とは東京都に住む就業者を指し、居住地ベースの統計です。

 就業者数が減少に転じる背景には、生産年齢人口の縮小があります。東京は全国と比べて若年層の流入が続いてきましたが、それでも少子化の影響は避けられず、20〜64歳の人口は2030年以降減少に向かいます。高齢者の就業参加が進んでも、全体の減少を補い切れないことがピークアウトの主因となっています。

 産業別にみると、2020年と比べて2045年には医療・福祉が14万人、情報通信業が7万4,000人増える一方、製造業は32万6,000人、建設業は14万1,000人減少すると見込まれています。地域別では、区部の就業者数が2030年の865万2,000人を境に減少へ転じ、多摩地域や島しょ部も2025年以降は同様の傾向が予測されています。

 こうした人口動態の変化に加え、AIの急速な普及が東京の労働市場に新たな動きをもたらしています。AIの導入は「雇用が減るかどうか」という単純な議論に収まらず、職種構造の変化やスキル要件の高度化、産業ごとの役割転換など、多面的な影響として現れています。

 一般事務やデータ入力、コールセンター業務など定型的な作業を中心とする職種では業務効率化が進む一方、AIを活用して価値を創出する分野は着実に広がっています。データ分析、AI開発・運用、サイバーセキュリティ、DX推進などでは人材需要が高まり、東京都の産業別見通しでも情報通信業は2030年以降も成長が続くとされています。AIの普及は、都市の産業構造に新たな可能性を開く追い風となっています。

 医療・福祉分野の拡大もAIの進展と連動しています。介護ロボットやAI診断支援の導入により現場の負担が軽減され、人間が担うべき対人支援や専門的判断に集中できる環境が整いつつあります。その結果、同分野の雇用は2020年から2045年にかけて14万人増える見通しです。また、文章作成支援や翻訳、作業手順の自動化などAIツールの普及は高齢者の就業継続を後押ししており、60歳以上の就業者が増える背景の一つとなっています。

 総じて2030年の東京は、労働力人口のピークアウト、女性と高齢者の就業拡大、AI普及による職種構造の再編、産業ごとの成長分野の明確化といった複数の変化が同時に進む「転換点」にあります。東京都が掲げる「未来の東京」戦略でも、テレワークの定着やデジタル人材育成が重点施策として位置づけられており、都市としての競争力を維持・強化するための取り組みが進められています。

都内の就業者数は2030年にピークを迎え、その後は減少に転じる見通し。