適正取引に向けた望ましいパートナーシップとは

中小企業庁、日本自動車工業会、日本自動車部品工業会の鼎談から

 2025年12月23日付の日本経済新聞・全面広告では、2026年1月1日に施行される「中小受託取引適正化法(取適法)」をめぐり、中小企業庁、日本自動車工業会、日本自動車部品工業会による鼎談の内容が掲載された。記事では、自動車産業を中心とした適正取引の取り組みが大きく取り上げられている。

 今回の法改正は、エネルギー費や資源価格、人件費の上昇といった環境変化が続く中で、中小企業が適正な利益を確保し、持続的に成長できる経済構造を構築することを目的としている。とくに、長年続いたデフレ環境からの脱却を目指す日本経済にとって、サプライチェーン全体で適正な価格形成が行われることは極めて重要な課題である。

 中小企業庁では、こうした背景を踏まえ、中小企業が価格転嫁を実行しやすくするための支援策を強化している。よろず支援拠点に設置された「価格転嫁サポート窓口」では、価格交渉の進め方や原価計算の方法、取引先とのコミュニケーションに関する相談など、実務に直結する支援が提供されている。価格交渉に不慣れな企業や、原価算定に不安を抱える企業にとって、こうした相談窓口は大きな助けとなっている。

 年に2度実施される「価格交渉促進月間」では、全国約30万社を対象にアンケート調査が行われ、業種別の価格転嫁率や委託者(=発注側)リストが公開されている。これにより、中小企業の声が政策に反映されるだけでなく、業界全体の取り組み状況が可視化され、改善のサイクルが継続的に回る仕組みが整えられている。アンケートの回答率は依然として十分とは言えないものの、年々認知が広がり、企業の意識変化が着実に進んでいることがうかがえる。

 一方で、中小企業の現場には依然として課題が残されている。長年同じ委託元(=委託者(親事業者))との関係性に依存してきた企業ほど、価格転嫁を切り出しにくいという声が多い。また、「エビデンスを示すよう求められても、どのように準備すればよいかわからない」という悩みも少なくない。

 こうした課題に対応するため、業界団体や自治体が提供する価格転嫁ツールの活用が広がっている。部工会が公開するツールや、埼玉県・中小機構が提供するツールは、原価の根拠整理を支援し、交渉の第一歩を踏み出すための実務的な手助けとなっている。

 また、サプライチェーンの上流に位置する企業が「御社の先の取引先にも価格転嫁をお願いしたい」と明確に発信する動きも広がりつつある。こうした姿勢が示されることで、中小企業は自社の取引先に対しても適正な価格を求めやすくなり、価格転嫁がサプライチェーン全体で連鎖的に進む環境が整い始めている。

 自動車産業では、メーカーと部品企業が連携し、取引慣行の改善や品質基準の適正化に取り組む動きが加速しており、業界全体での意識改革が進展している。

 記事全体を通じて強調されているのは、中小企業自身が主体的に変わる意識の重要性である。委託者に依存するのではなく、自社の原価を正確に把握し、その根拠に基づいて適正な価格を提示する姿勢が求められている。適正取引と生産性向上を両輪として進めることで、利益確保や賃上げ、設備投資につながり、企業の持続的な成長に寄与する。これは単なる価格交渉ではなく、企業の競争力を高め、サプライチェーン全体の強靭化に貢献する取り組みである。

 取適法の施行を迎えるにあたり、中小企業が自らの強みを発揮しながら、適正取引を通じてサプライチェーン全体の健全化と成長に貢献していくことが期待されている。行政・業界団体・企業が連携し、全国の中小企業が安心して取引できる環境づくりを進めていくことが、今後ますます重要となる。

 東京都金属プレス工業会としても、こうした流れを受け、取適法対応へのロードマップを策定し、会員企業が適正取引を実践できるよう支援体制を強化していく方針である。具体的には、価格転嫁に関する知識や交渉力を高めるための研修や情報提供を継続し、原価把握やエビデンス整理に役立つツールの活用促進を図る。

 適正取引と生産性向上を両立させ、ものづくり産業の持続的な発展に貢献していくことが本会の役割である。今後も会員企業とともに、健全で強靭なサプライチェーンの実現に向けて着実に取り組んでいく考えである。


出典:適正取引支援サイト