
ベトナム特派員 高橋 正志
2025年の最新データが示す調達率
ジェトロ(日本貿易振興機構)が毎年発表しているレポートに、「海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」がある。アジアとオセアニアに進出している日系企業にアンケート調査を行い、⽇系企業の活動実態を明らかにするというものだ。2025年版が11月26日に発表された。調査期間は2025年8⽉19⽇~9⽉17⽇。北東アジア5ヶ国・地域、ASEAN9ヶ国、南⻄アジア4ヶ国、オセアニア2ヶ国の計20ヶ国・地域に進出する⽇系企業、全5109社から有効回答を得ている。
90ページのスライドは内容豊富で読み応えがあるが、いつも注目しているのが現地調達率。なぜならベトナムの現地調達率は低く、それが製造業発展のアキレス腱にもなっているからだ。早速2025年版を見ると、ベトナムの原材料・部品の調達先の内訳(国・地域別)は「現地」が38.1%、「日本」が32.2%、「中国」が14.8%、「ASEAN」が8.4%。
つまり現調率は38.1%なのだが、これは全平均の47.9%、ASEAN平均の42.9%よりも低く、トップ3は中国(71.0%)、タイ(59.4%)、インドネシア(49.6%)となっている。
現地調達率を巡る数字の真相
ただし、これらの数字はあくまで「現地国・地域での調達率」を示すものであり、必ずしも現地企業からの調達を意味するわけではない。ベトナムの場合、その内訳は「地場企業」が48.1%、「現地進出の日系企業」38.5%、「その他外資企業」13.4%となっている。本来であればコストの安い地場企業から原材料や部品を調達するのが望ましい。しかし、品質や供給体制などの制約からそれが難しく、結果として現地の日系企業や非日系の外資系企業から調達するケースが多い。これはベトナムに限ったことでなく、中国では「地場企業」比率が70.9%と高い一方で、タイでは45.2%とベトナムよりも低く、各国でその比率は様々だ。
そのため、「地場企業からの調達こそ本来の現地調達率」と定義すれば、ベトナムは18.3%、中国は50%、タイは26.8%となり、数値は大きく変わってくる。
それだけでは終わらない。例えば、ベトナムの工場で加工した金属部品を現地の日系企業が販売した場合、その調達は「地場」でなくて「日系」と分類すべきなのか。あるいは、台湾の現地商社が日本から輸入した化学材料を納入した場合、それは「日本」ではなく「その他外資企業」と扱うのか。こうした疑問は残るものの、ベトナムの日系企業の有効回答率は毎年高く、今年は906(製造業409、非製造業497)の回答が集まり、ベトナムの現地調達率を考える上で良い指針となっている。
この調査は1987年から実施されており、今年で39回⽬を迎える。この10年を振り返ると、ベトナムの現地調達率も全体平均の現地調達率も大きな変化は見られない(グラフ参照)。ただし、当地の日系企業は調達率を向上を目指しており、ジェトロによる日系企業と地場企業との商談会や、商工会議所による日越製造業のビジネスマッチング会を開催するなどサポートを続けている。
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日本の厳格基準が招く現場の壁
現地調達率の低さは、ベトナムの裾野産業の伸び悩みが大きな原因だ。したがって日系企業に限った課題ではないが、日系製造業特有の問題も存在する。それは品質・価格・納期・数量に対する要求が厳しい点である。日本の中小サプライヤーは、発注先の品質基準(海外では「日本品質」と呼ばれる)を遵守し、価格は決して高くなく、時には短納期や小ロットにも対応する企業が少なくない。
これを日本の常識とするなら、少なくともベトナムでは嫌がられる。価格が安い分品質もそこそこで良い、短納期だから割増し価格になる、小ロットだから納期は余裕がある、ならまだしも、すべての条件を飲める企業は少ない。ベトナムの製造業は徐々に技術力を高め、日本や韓国の大手メーカーからティア1は無理でもティア2などで受注する企業が増えてきた。彼らに「選ばれる」ためには、日本企業側も発注姿勢を見直す必要があるだろう。
実際、ベトナム企業からは「日系は必ず値切るのにスケジュールはきついし、やり直しが多い」「ロット数が10倍で納期が緩やかなため、米国系企業と取引している」といった声も聞かれる。部品調達において日系企業は、ベトナム企業→韓国・台湾系企業→日本企業の順で検討することが多く、価格・品質・仕事のしやすさがこの順番に比例している。日本では総じて安価でありながら良質な部品を入手することができる。これは世界的に見ても極めて稀な事例である。
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