日本では、外国人が自動車を運転する方法として「国際運転免許証」と「外国免許切替制度」の2つがあります。国際運転免許証はジュネーブ条約加盟国で発行されたものであれば日本国内で有効であり、加盟国は100以上に及びます。一方、中国など非加盟国の場合は免許切替制度を利用する必要があります。
外国で取得した有効な運転免許証を日本の免許証に切り替える「外国免許切替制度」は、長期滞在者や帰国者が日本国内で安全に運転できるようにするための仕組みです。切り替えには、免許取得国で3か月以上滞在した証明が必要であり、住民票やパスポート、在留カード、免許証の翻訳文(JAFなどが発行)を提出しなければなりません。手続きは免許センターで予約後、適性検査、学科試験、技能試験を経て合格すれば免許証が交付されます。しかし従来は比較的容易に取得できたため、短期滞在者でも免許を得られるケースがあり、制度の乱用が問題視されてきました。
近年、訪日外国人や在留外国人の増加に伴い、外国人運転者による交通事故件数も増加しています。2020年には約5,400件だった事故が、2024年には7,200件を超え、レンタカー利用者による事故も急増しました。とくに北海道など観光地では、冬道に不慣れな旅行者による事故が目立ち、韓国、中国、ベトナム、ブラジル、フィリピンなどの国籍が多くを占めています。2025年上半期の統計では、外国人運転者による死亡・重傷事故が258件に達し、全体の事故件数に占める割合は約2.1%と10年前の倍に増えています。免許形態別では、日本の免許に切り替えた外国人が約8割を占め、レンタカー利用者による事故も引き続き増加傾向にあり、観光地での安全対策が急務となっています。
外国免許切替制度が厳格化
こうした背景から、2025年10月に外国免許切替制度が厳格化されました。学科試験は50問に増え正答率90%以上が求められ、技能試験も新規免許取得者並みに厳しくなっています。その結果、合格率は従来の90%以上から3割前後へと急落しました。これは制度の乱用防止と交通安全確保を目的としたものですが、外国人労働者や企業にとっては新たなハードルとなっています。
申請の際に住民票提出を原則とすることで、短期滞在者の乱用を防止する方向です。また、交通ルールの多言語周知も強化されており、出入国在留管理庁は19言語で生活・就労ガイドブックを提供し、警察も英語・中国語・韓国語のリーフレットを作成しています。さらに、北海道警察はレンタカー事業者と連携し、外国人旅行者に冬道運転の啓発動画を外国人旅行者に視聴させる取り組みを進めています。
日本国内で外国人が交通事故を起こした場合も、日本人と同様に法律が適用されます。事故の責任は「刑事責任」「行政処分」「民事賠償」の3つに分かれます。飲酒運転や重大事故では懲役や罰金などの刑罰が科され、救護義務違反も処罰対象です。行政処分としては免許停止や取り消しが行われ、日本の免許に切り替えた外国人も同じ扱いになります。民事賠償については、日本法に基づき損害賠償を請求できますが、任意保険未加入の場合は自賠責保険や政府保障事業による最低限の補償しか受けられません。加害者が帰国してしまうと賠償請求が難しくなるため、弁護士を通じた対応が推奨されます。
日本の交通社会は多様化が進んでおり、外国人と日本人が共に安心して道路を利用できる環境づくりが求められています。制度改正と教育の充実を両輪として進めることが、持続的な安全社会の実現に不可欠です。
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