4台に1台がEVのカリフォルニア州、いったいなぜ?

アメリカ特派員 今西三千絵

 こんにちは、カリフォルニア州北部のシリコンバレーで働く30代女性筆者です。

 最近、新しくEV(Electric Vehicle=電気自動車)を購入したと同僚が嬉しそうに報告してくれました。EVは”電気で走る車”の総称で、ガソリンを燃焼させて走るエンジン車と異なり、外部から充電するなどして得た電力でモーターを駆動します。

EV=Electric Vehicle (電気自動車)

 試運転と称して、さっそく助手席に乗せてもらう。中古車を購入したと聞いたが、まず内装からして近未来。中央には大きなスクリーンがあり、バッテリー充電中にYouTubeや映画を鑑賞するとのこと。バックミラーのあたりには運転者の様子を監視するカメラが内蔵され、居眠りや視線逸れをチェックして自動運転を支援する。

 Tesla(テスラ)の“Summon(サモン)機能”(*1)では、スマホアプリから車を自動で呼び出せる。例えば駐車場では、運転者がわざわざ車を停めた場所までいかずとも、ボタンひとつで店の入り口まで、まるでラジコン車のように迎えに来てくれるのだ。こういったエキサイティングなインターフェースに加えて、実際の走行もこれまたすごい。一般的なガソリン車に乗る筆者からすると、とにかスピードの立ち上がりがまるで異次元に速く鋭く、驚いた(運転経験の浅い筆者の感想ゆえ、多少の誇張をご容赦ください)。

*1 Summon, 世代による機能差あり/公共道路での使用は不可

写真1. Tesla model Sの車内(2022年式)

カリフォルニアのEV購入者を取り巻く環境

 筆者は数年ほど前よりカリフォルニア州のベイエリアに暮らしている。AppleやGoogle, Meta, NVIDIAをはじめとする今をときめくテック企業本社が立ち並ぶ、いわゆるシリコンバレーだ。そんな土地柄もあってか、実際、日々すれちがう車のうち、およそ4台に1台はEVというのが肌間隔だ。場所にもよるが、市バスや地下鉄などの公共交通機関は東京・大阪ほど発達していない。通勤にせよ買い物にせよ、どこへ行くにしても車中心の生活だ。

 カリフォルニアといえば華やかなLAのイメージが強いかもしれないが、市街地を少し離れると一面広大な農村地域も多い(カリフォルニア州の土地の大部分は、実は約8割が農村地域に分類されるのだ)。当州では、新車・中古車の電気自動車を対象に補助金を支給する複数のプログラム(*2)が存在していた。しかし2025年にかけて補助金制度の新規受付が相次いで終了すると発表され、今回の友人の購入は、まさに“駆け込み需要”のタイミングだった。

 一方で、“バッテリーを充電しないとどこにも行けないのでは?”という声も。しかしこの心配は杞憂で、街中の充電インフラは比較的よく整備されている。日本人に人気の大手スーパーマーケット”whole Foods Market”には、多くの店舗にEV充電スポットが用意されている。車種によるが、フル充電すれば最長で400マイル(およそ650km)走行できるモデルもある(*3)

*2 DriveClean | Clean Car Buying Guide, CVRP Home | Clean Vehicle Rebate Project

*3 Which electric cars have the most range?

写真2.Whole Foods MarketのEV充電スポット(右手前)

EV産業は今後も普及拡大する?それとも。。。

 こういった補助金制度、インフラ整備の背景には、カリフォルニア州独自のZEV(Zero Emission Vehicle=ゼロ・エミッション車)規制(*4)がある。メーカーは販売台数の一定割合をZEVにする義務を負い、達成できなければクレジットを購入する仕組みだ。これがTeslaなどのメーカーの成長を後押しした。ガソリン価格が高く、環境意識の強い住民が多いことも追い風となった。

 州内にはTeslaやLucid(アリゾナに工場を置く高級EVメーカー。TeslaのModel S開発責任者だったピーター・ローリンソンがCEOを務める)などEV関連企業の本社が集積する。2025年、州内EV新車販売比率は約30%を占める。同年の全米EV販売比率はおよそ10%であるため、カリフォルニアが全米のEVシェアを牽引しているといっても過言ではないだろう。

 しかし、こういった断面もある。環境意識の高さを裏付ける選択肢として選ばれるイメージの強いEVだが、この普及が必ずしも地球温暖化抑止に直結するとは限らない。発電段階で石炭や天然ガスが使われる国では、たとえ走行時排出がなくても「電源由来のCO₂」は依然として多く、EVバッテリーの製造・廃棄過程の温室効果ガス排出も課題だ。電力供給の脱炭素化やバッテリーリサイクル技術の確立が進まなければ、EV化は単なる“排出の見かけ上の移動“にすぎないとする見方もある。2025年トランプ政権へ交代後、税控除の一部廃止が提案されるなど(*5)、EVには逆風となる可能性もある。

*4 Zero-emission Vehicle Regulation | California Air Resources Board

*5 Senate Republicans seek to kill $7,500 EV tax credit | Reuters

まとめ

 本記事では、カリフォルニア州シリコンバレーに暮らす生活者の視点から、EVの普及とその背景を紹介してきた。新車販売台数の過半数をEVが占める北欧の一部、中国(*6)に次いで勢いを見せる当州は、まさにEV先進地域そのものだ。一方、日本ではガソリン車とハイブリッド車が主流であり、EV新車販売比率は数%にとどまる。環境に配慮しつつ、日常の使い勝手やコストのバランスを考えると、いまの日本ではHVがちょうどいい選択肢か。

 人とクルマの関係は、各地域の政策、産業、生活者の選択によって、それぞれ異なる様相を示す。世界のEV地図がこれからどのように塗り替わっていくか、関心が尽きない。

*6 Global EV Outlook 2025 – Analysis – IEA