高市首相とトランプ大統領が初会談、日米協力の新たな一歩

 2025年10月28日、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領が6年ぶりに来日し、就任直後の高市早苗首相との初の首脳会談が東京・迎賓館で行われました。両首脳は、安倍晋三元首相の遺志を継ぎ、日米同盟の再強化と経済協力の深化を柱とする新たな関係構築に向けて、異例の親密さをもって対話を重ねました。会談では、総額5500億ドル(約83兆円)規模の対米投資に合意し、日本企業による米インフラ再整備支援を柱とする「80兆円構想」が発表されました。

 投資対象には半導体、重要鉱物、エネルギー分野が含まれ、三菱重工業、東芝、三菱電機、日立製作所、ソフトバンクなどが中心となって参画する見通しです。たとえば、三菱重工業と東芝は、米ウェスチングハウスと連携し、革新軽水炉や小型モジュール炉(SMR)などの原子力事業に関与する予定です。ソフトバンクは、米OpenAIやOracleと連携し、AIデータセンターの構築と電力供給体制の整備を主導しています。また、英Armを軸とした半導体戦略にも取り組み、AI向け半導体供給体制の強化を進めています。資金面では、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)が融資・保証を通じて企業のリスクを軽減し、投資を後押ししています。

 現時点で判明している16件のプロジェクトの合計額は約3934億ドル(約60兆円)に達しており、エネルギー関連が最多の8件を占めています。これらの事業は2029年1月19日までに実施される予定で、トランプ政権下での関税引き下げと連動したインセンティブも含まれています。

 一方で、課題も残されています。多くの案件は候補段階にあり、企業側の収益性やリスク判断が整っていない状況です。政府主導の枠組みであるため、企業が主体的に動くには明確なメリット提示と制度設計が求められます。また、トランプ政権の「自国第一主義」により、利益配分が米国偏重になる懸念も指摘されています。

 安全保障面では、日本の防衛費増額とインド太平洋地域の安定に向けた連携強化が確認され、戦略的パートナーシップの深化が打ち出されました。高市首相は、2025年度中に防衛費をGDP比2%へ引き上げる方針を改めて表明し、米側から具体的な数値的要求がなかったことを「最大の成果」と評価しました。これにより、日本は自主的な判断で防衛力強化を進める余地を確保した形です。

 今回の合意は、単なる経済協力を超え、日米両国が戦略的課題に共同で取り組む姿勢を鮮明にしたものです。高市首相は「日本企業の技術と信頼が、米国の未来を支える」と語り、トランプ大統領は「これは日米の新たな黄金時代の幕開けだ」と応じました。

 会談後、両首脳は米軍ヘリ「マリーンワン」で横須賀基地を訪問し、原子力空母ジョージ・ワシントンで演説を行いました。トランプ大統領は高市首相を「勝者」と称賛し、「JAPAN IS BACK」と記された帽子を贈呈するなど、象徴的な演出が続きました。夕刻には、トヨタの豊田章男氏やソフトバンクの孫正義氏ら経済界トップとの夕食会も開催され、民間レベルでの協力強化にも意欲を示しました。

 この会談は、安倍外交の継承と日米関係の再定義を象徴するものであり、信頼と絆を基盤とした新たな外交の幕開けとなりました。