光の祭典「Diwali(ディワリ)」とその経済効果

インド特派員 石﨑奈保子

 10月~11月にかけて、ハロウィン(米国)、オクトーバーフェスト(ドイツ)、死者の日(メキシコ)など、世界では数多くのイベントが行われるが、インドでは、ヒンドゥー教の暦における新年にあたる2025年10月18日~23日、インド最大の祭りが開催された。その名はDiwali(ディワリ)。ディーパ(Deepa:灯火)とアヴァリ(Awari:列)を意味するサンスクリット語が語源で、Deepawali(ディーパアヴァリ)とも呼ばれる。

 祭りの期間は、「闇に光が打ち勝つ」象徴として、家々がオイルランプやイルミネーションで彩られ、夜には花火と爆竹が鳴り響く何とも華やかな5日間の「光の祭典」だ。その音は悪霊を追い払うと信じられており、祭りの重要な要素である。ただし、近年では環境への配慮から、使用時間の制限やエコ花火への移行も進んでいる。

 友人の話によると、ディワリ当日は家族や親戚が集まり、20人以上のギフトを交換しながら美味しい食事を楽しむ。壁の塗装まで新しくする家庭もあるほど。家の中もイルミネーションで飾られ、まるで結婚式のような豪華さで、日本のお正月・お盆・クリスマス・花火大会を一度に体験するようなイベントである。みな、親戚と集まって過ごすこの5日間を心待ちにしていると言う。

 ディワリは「インドで一番お金が動く時期」で、多くの企業が従業員に「ディワリボーナス」が支給する。この時期の買い物は縁起が良いとされ、個人消費意欲も高まり、衣類、宝飾品、家電、自動車、花火、食品(菓子など)がよく売れる。

 インド政府は今年、ディワリを前に、物品・サービス税(GST)の税率を大幅に簡素化し、引き下げた。これまでの4段階の税率(5%、12%、18%、28%)を、主に5%と18%の2段階に集約し、一部品目(特に生活必需品や家電、自動車など)の税負担を軽減している。

 全インド貿易業連盟(CAIT:The Confederation of All India Traders)は、今年の秋から冬にかけての祭事商戦(主に Diwali を中心とする祝祭シーズン)における総売上高が、約 5兆4,000億ルピー(日本円で約9兆3,400億円) に達したと発表。この数字は前年と比べ、約 25%の増加 を示しており、インド国内の小売・流通市場において記録的な成長となった。政府の後押しもあり、物流、包装、装飾、サービス産業といった周辺産業にも数十万人規模の臨時雇用が創出されたと報じられている。