AIブームが産業界を牽引する台湾

台湾特派員:諸治隆仁

 台湾の産業と聞いて多くの人がイメージする半導体。その半導体製造装置と周辺機器の最新技術・製品、サービスが一堂に会する専門展示会「SEMICON TAIWAN 2025(セミコンタイワン)」が、2025年9月10日から12日まで、台湾・台北市南港区の台北南港展覽館1・2館で開催された。30回目を迎えた今回のセミコンタイワン、主催者であるSEMIの発表によると、65カ国から過去最高の1,200社以上の企業が参加し、4,100のブースを展開。来場者数は3日間で10万人を超えた。

今年のセミコンタイワンもAI関連が話題の中心

セミコンタイワンは今年30周年を迎えた

 今年のセミコンタイワンは30周年を契機にリニューアルが行われ、「国際半導体週間」の行事として開催された。テーマは「Leading with Collaboration. Innovating with the World」、日本語でいうならば「協業でリード、世界と共に革新」となるだろうか。台湾半導体産業界の世界における立場と役割を表しているといえるだろう。

 そのセミコンタイワン、展示、フォーラム、どちらも話題の中心となっていたのは今年もAI関連だった。技術進化のスピードが著しいAIを支える半導体技術でカギとなるとされているのは複数の半導体チップを垂直に積み重ね、シリコン貫通ビア(TSV)などで接続して一つのデバイスにする3次元集積回路(3DIC )、複数のチップを組み合わせて1つのチップに見立てるチップレットのほか、大型のガラス基板つまりパネルを支持材に使う半導体パッケージング技術のファンアウトパネルレベルパッケージング(FOPLP)、加えて、半導体チップ(CPUやASICなど)と光学部品を同じパッケージ基板上に集積する光電融合のコパッケージオプティクス(CPO)などといった革新的な技術が来場者から注目された。

日本人技術者が創設し、日本の工作機械メーカーと関係の深い台湾メーカー、東台精機の出展もあった

 TSMCやUMCなど、台湾のファンドリーメーカーは最先端の半導体生産技術を追求している。日本の半導体製造装置メーカーやコンポーネントメーカー、材料メーカーが2ナノメートル(10億分の2メートル)という超・微細化された回路線幅の実現で果たしている役割は大きい。セミコンタイワンには東京エレクトロンや荏原製作所、キヤノン、東京精密、ディスコ、堀場製作所、CKD、ニデックなど、日系の大手メーカーが最新の製品を展示。また会場内の特別展「スマート・マニュファクチュアリングEXPO」では日系中小企業が装置用部品のための最新加工技術を紹介していた様子も見られたことなど、出展した各社は高い技術力・製品力をアピールした。

 一方、日本パビリオンではやはり九州各地域の展示が目立った。中でも注目されていたのはTSMCの進出先である熊本県ブース。台湾の新竹地域などの科学工業園区を見倣った熊本サイエンスパークの構想が紹介されていた。

台湾半導体業界の好調はしばらく続く

今年の双十国慶節も台北101からの打ち上げ花火と500機のドローンが台北の夜空を彩った

 トランプ関税の影響でその成長スピードが鈍化するのではないか、という不安の声もあったのだが、セミコンタイワンの来場者からは「台湾から北米へ輸出するAIサーバーの貨物量は増加の一途」(日系大手物流企業の幹部)という声が聞かれた。また、半導体装置メーカーや部品メーカーの営業担当者も「AI向け半導体は生産、受注共に好調のようだ。今後も積極的な投資が続くだろう」と今後の見通しを語る。

 こうした中、台湾の頼清徳総統は10月10日、日本の建国記念日に当たる台湾の双十国慶節の演説で政府の今後の方針を発表した。AI関連で掲げられたのが「AI新10大建設の推進」。台湾を世界で屈指のコンピューティングセンターの一つに押し上げるとともに、「量子技術」「シリコンフォトニクス」「ロボット」という3つの基幹技術の研究開発に対して積極的に投資し、さまざまな業界・企業でAIツールの導入を進め、各分野へのAIの応用を促進。台湾が世界の技術開発において主導的な地位を維持できるよう支援していく、というもの。台湾の半導体産業の好調はしばらく続くようだ。