比例代表の投票用紙に「民主党」という略称が2つ
2025年7月20日に投開票が行われた第27回参議院選挙は、戦後初の「衆参少数与党体制」を生む歴史的な転換点となりました。
石破政権下の自民・公明連立は、改選議席125のうちわずか47議席の獲得にとどまり、非改選議席を含めても過半数を割り込みました。衆議院に続き参議院でも少数与党に転落したことで、政権運営は重大な困難に直面しています。
一方で、国民民主党(17議席)と参政党(14議席)が躍進し、野党勢力が拡大。とりわけ参政党は、東京・大阪などの選挙区で初の議席を獲得し、比例でも大きく票を伸ばしました。
参議院選挙では「選挙区」と「比例代表」の2票を使い、地域代表と政党支持の両面から民意を反映する構造となっています。比例代表では、政党名(正式名称)または略称のいずれか、もしくは候補者名を記入することが認められています。
今回の選挙では、比例代表の投票用紙に「民主党」という略称が2つ並ぶという異例の事態が発生し、違和感を覚えた方も多かったのではないでしょうか。これは、立憲民主党と国民民主党の両党が略称として「民主党」を届け出ていたためです。
略称の重複は、公職選挙法上で認められており、中央選挙管理会も原則受理せざるを得ません。その結果、記載台には同じ略称が並び、「どちらの民主党なのか分からない」「紛らわしい」といった有権者の混乱を招きました。
実際、「民主党」とだけ記された票は、どちらの政党への支持かを判別できないため、案分票(按分票)として処理されます。両党の得票比率に応じて票を分配する仕組みで、たとえば立憲民主党が60%、国民民主党が40%の得票であれば、その割合に従って案分されます。
この問題は2021年衆院選、2022年参院選、2024年衆院選でも繰り返されており、2025年も例外ではありませんでした。SNSでは「略称をなぜ調整しないのか」「有権者の意思が正確に反映されない」といった疑問や批判の声が相次いでいます。
両党はいずれも旧民主党の流れを汲んでおり、「民主党」の略称を譲れない立場にあることは理解できますが、公職選挙法の運用上、選挙管理委員会が届け出を拒否することは原則できません。その結果、略称重複による案分票が構造的に発生し続ける状況となっています。
民意をより正確に反映する観点からも、選挙制度の在り方について改めて検証を行う必要があると言えるでしょう。