ドイツ特派員 畠山佳奈子
先日ドイツ・ミュンヘンで隔年開催される世界最大級のエレクトロニクス産業の見本市であるELECTRONICAにおいて、日本企業のブースの通訳を担当して参りました。ELECTRONICA は1964年から始まり、電子部品、システム、アプリケーション、サービスなど、エレクトロニクス分野の最新技術と製品が一堂に会する場として知られています。
今年のELECTRONICAは59の国と地域から3,480の出展者が参加し、そのうち76パーセントが海外からの出展者という事でした。また約100の国と地域からおよそ80,000人の来場者が訪れました。(海外からの来場者の割合は54パーセント) 。ドイツに次いで来場者数の多かった国は、イタリア、中国、フランスの順でした。
展示内容は、持続可能性、人工知能、モビリティの未来、若手人材の育成など、多岐にわたるテーマが取り上げられました。ELECTRONICAは、エレクトロニクス業界の最新動向や技術革新を紹介するだけでなく、業界関係者同士のネットワーキングやビジネスチャンスの創出の場としても重要な役割を果たしています。またヨーロッパ最大のマイクロエレクトロニクス産業向けの展示会およびカンファレンスであるSEMICON Europaも同時開催され、会場は連日熱気に包まれていました。
写真:ELECTRONICA 2024のホームページより
エレクトロニカが主催する革新的なスタートアッププラットフォームであるELECTRONICA Fast Forward 2024では新しいビジネスモデルや技術が紹介されました。こちらでは選出されたスタートアップ企業 の一社であるBTRY AGをご紹介します。
BTRY AGは、スイスのドゥーベンドルフに拠点を置くスタートアップ企業で、EMPA(スイス連邦材料試験研究所)とETHチューリッヒ(スイス連邦工科大学)のスピンオフとして設立されました。同社は、先進的な半導体製造技術を活用し、高エネルギー密度の全固体電池を開発しています。 BTRYの革新的な技術は、薄膜全固体電池を積層することで、1分以内の急速充電と高エネルギー密度を実現しています。
また、今年のエレクトロニカにおける自動車関係の最も重要なトピックは、パワートレインの自動化、アクティブセーフティ、車載電源とのことでした。
パワートレインとは、車両が動くための「動力を生み出し、車輪に伝える仕組み」を構成する部品やシステムのこと(エンジン/モーター、トランスミッション、 駆動系など)を指しますが、次世代車両では、効率性、環境性能、軽量化が求められており、パワートレイン技術の進化が自動車産業の鍵を握っています。
アクティブセーフティとは、事故を未然に防ぐために車両が持つ安全機能や技術のことを指し、自動車の安全性向上に欠かせない要素であり、とくに自動運転技術の開発とも深く関わっています。
また自動運転、コネクティビティ、インフォテインメント(主に車内で提供される情報サービスやエンターテインメント機能)、製品としてのソフトウェアなども注目されていました。
次回のELECTRONICAは、2026年11月10日から13日まで開催予定です。エレクトロニクス業界に関心のある方や最新技術を追求する企業にとって、見逃せないイベントとなっています。
見本市は、世界中の人々や多様な製品が集まり、古くから商談の場として利用されてきた歴史を持つ重要なプラットフォームです。現代のドイツにおいても、見本市はビジネスの成功に欠かせない存在として多くの企業や業界関係者から高い注目を集めています。ミュンヘンをはじめ、ドイツ各地で多岐にわたる分野の見本市が開催されておりますので、皆様ぜひ一度ドイツの見本市を訪れ、ビジネスの可能性を広げてみてください。
参考資料:
今注目すべきドイツのメッセ – ビジネス関係者から、一般来場者まで – ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト
Automotive trends at electronica 2024: a glimpse of the future