花の都パリ

フランス特派員 大貫麻奈


フランス、とりわけパリというとどのようなイメージが浮かぶだろうか。日本では「花の都」と称されることも多く、文化、芸術、食、建築といった素敵なイメージに憧れを抱いている日本人はとても多い。今回は実際のパリの様子を述べてみたい。

まず初めに圧倒されたのはやはり街並み。外に出ただけで華やかな絵画の中にいるような世界が広がり、普通の民家が歴史的建造物に見えてしまうくらい圧倒的である。そして建物はもちろんあちこちにある公園もとても美しく、平日であっても多くの人がベンチで本を読んだり寝ながら日光浴をしたり、ある人はぼーっとしていたりと、日本ではあまり見られない光景だろうと思う。 
そしてイメージ通り「食」も素晴らしい。とりわけパンは一度食べたら忘れられないだろう。実際にフランス人がバゲットを何本もカバンに入れて歩いているのを見た時は、映画のワンシーンだけではないんだと感動を覚えた。またカフェのテラス席でお茶をするフランス人、こんなにも絵になるのかと驚いた。冬の厳しいヨーロッパでは日光が出ている時にここぞとばかりに外に出て、日の光を浴びるのである。肌寒い日も、厳しい暑さの日もテラス席にはいつも大勢の人がいる。

なんといっても芸術の分野はため息が出るほど素晴らしい。音楽、ファッション、絵画、彫刻など、どれをとっても素晴らしく、それらを誇りに思い、守り、さらに発展させていこうとする姿勢には見習うべきところが多いと日々痛感する。中でもパリオペラ座は世界中の演奏者の憧れの場所であり、演出や舞台セット、衣装は本当に豪華で、ここまでの予算が出せるというのはすごいなと見るたびにひしひしと感じる。国がこういった芸術を大切にしている証だろうと思う。 
日本と大きく違うなと感じる点は「挨拶」である。知り合いに会った時だけでなく、どこでもお店に入った時にはまず挨拶「bonjour」。何か尋ねる時も挨拶なしではいい顔はされない。日本にはあまりない感覚のため入店時などはすこし戸惑うかもしれないが、目と目を合わせて挨拶や感謝をしっかりと伝えるフランス人を見ていると、人と人との距離が近付きやすく、社交的な国民性だといつも感じる。

ではここから日本人があまりイメージしないリアルな一面を述べていきたいと思う。


まず衛生面。あまり想像ができないと思うが、綺麗な街並みに反して足元を見ると、多くのごみや犬のフン、タバコの吸い殻などを目にする。そしてネズミ。とにかくパリにはネズミが多く、メトロや店舗、そして家の中に住み着いてしまう場合もある。そして公衆トイレがほとんどないため、外で用を足してしまう人がいたりとひどく臭い場所が正直たくさんある。


次にストライキ。日本では考えられないが、交通機関が頻繁にストライキを起こし、動かさないと決まったら絶対に電車やバスは動かない。
2023年には年金受給年齢の引き上げに反発したごみ収集や焼却場の従業員がストライキを起こしたことからパリ市内にはごみが溢れ、毎日外に出るとひどい悪臭が漂っていた。 


そんなパリだが、2024年8月にはオリンピックが開催された。多くの人々が憧れるパリでのオリンピックに期待は高まっていたが、実際にはメトロの切符が2倍の価格になったり、右岸と左岸 (セーヌ川を挟んで北部を右岸、南部を左岸と呼ぶ)を結ぶ橋が全て通行止めになってしまったりとパリ市民は不便を強いられることが多く、地元民はオリンピック期間中にパリから出ていってしまうということが起きていた。せっかくのオリンピックなのにと残念な気持ちになったのは筆者だけではないだろう。また観光客相手にホテルの価格をかなり高額に設定したりということもあり、想像していたより観光客は少なかった印象を受けた。


夏でもエアコンがなかったり、セーヌ川の衛生問題等とても多くの問題はあったものの、競技中の景色であったり、開会式や閉会式の演出はもちろん賛否両論あるがフランスらしさを感じられるものであったのではないかと思う。特にパリの日常を見ている者としては、競技会場もぎりぎりまで完成しなかったり、電車も新たに完成予定だった線が間に合うかわからないといった状態でとても心配だったが、なんとか成功という形に持っていけたというフランス人の底力のようなものを感じられた。今までに見たことのないセーヌ川を使っての演出や聖火台が気球で飛んでいくといった思い切ったアイデアをここぞという場面で使えるのはフランス人ならではないかと思う。