タイ特派員 齋藤正行
戻り始めた中国人旅行者
タイ観光スポーツ省が2024年9月の外国人入国者数を発表、9月単月では前年同月比18%増の252万1,005人だった。最多はマレーシア人で前年同月比22%増の47万2,899人、続く中国人は同65%増の46万9,668人。日本人は3位インド人、4位韓国人に次ぐ5位で同17%増の9万3,827人だった。1~9月は全体で前年同期比30%増の2,608万8,855人、中国人は同111%増の525万4,764人、マレーシア人は同12%増の374万2,474人、日本人は同33%増の76万2648人をそれぞれ数える。
中国人の入国者はだいぶ戻ってきた。月によって増減し、最近は7月をピークに数を減らしているが、昨年も同様の増減を示しており、10月には再び増加に転じる見込み。一方のマレーシア人入国者は、一般的な旅行や観光とはやや趣が異なる。国境を接するタイ深南部への陸路越境が多くを占め、週末や連休にタイ側の町のエンタメやナイトライフを楽しむといったスタイルだ。そのため、月によってマレーシア人に数を越されることはあれ、全体では中国人が最多だ。
かつては1,000万人超で全体の3分の1
日本での「爆買い」同様、コロナ禍前はタイでも中国人観光客の「ゼロドルツアー」が話題となっていた。「旅費や滞在費をほとんど無料にするので、ガイドが案内する土産物屋で買いものをしてほしい」といったツアーだ。もちろんさまざまな問題が噴出したが、入国者数は何年も高止まりのまま。2019年には1,113万8,658人を記録した。全世界からの総数3,991万6,251人のほぼ3分の1、アセアン9カ国からの総数1,087万6,922人を上回っている。ちなみに日本人は同年、178万7,185人を数えた。
タイ政府はコロナ禍からの経済回復で、常に観光促進の諸政策を打ち出している。査証(ビザ)発給条件の緩和や国内各地の観光名所の充実、さまざまなイベントの開催などだ。
もちろん各種産業の発展や投資環境の整備といった分野でも政府の努力は続いているが、例えばセーター前首相のころに打ち出された「イグナイト・タイランド」政策は、観光産業を中心とした経済活性化とインフラ整備の構想で、観光業に頼り切っている。昨年末に一度は無期延期とされた、タイに入国する外国人から徴収する「入国手数料」の導入案が、現在開発中のETA(電子渡航認証)システムに絡めて再び持ち上がっている。
コロナ禍前の活気を取り戻すべく、タイ政府は中国人の誘致に力を入れている。2023年に中国人の観光目的の入国で免除を決定した際、先のセーター前首相は措置開始日に空港に赴き、到着した中国人を出迎えていた。
スマート化した旅行スタイル
ただ、日本での爆買い同様、タイでも騒がしいと思えたほどの活気は再来していない。むしろ、中国人の旅行スタイルが変化し、以前と比べてずいぶんとスマートな印象を受ける。今後、中国人入国者は1,000万人を超えずとも、順調な右肩上がりで回復していくものと期待される。
企業による投資も個人の観光も、タイにとって最重要ターゲットは何事にも勢いがある中国。残念ながら行動が常に慎重な日本ではなさそうだ。
※それぞれの事情に合わせて「入国者」「旅行者」「観光客」を書き分けています。