台湾特派員:諸治隆仁
台湾政府が9月に発表した経済政策「5大信頼産業推進方案」において今後、推進していくとしている産業分野は半導体、人工知能(AI)、次世代通信、セキュリティー産業、軍事産業。中でもAI分野で、台湾政府は政府傘下のファンドと共に日本円で約470億円の予算を確保して特別投資を行うとしている。世界的にも活況を呈しているAI分野、この好況を受けて、9月には半導体製造装置・設備関連の展示会、セミコンタイワンが過去最大規模で開催された。
政府は「5大信頼産業推進方案」を公表
頼清徳総統は総統就任後、台湾の経済政策として「5大信頼産業推進方案」を打ち出している。この政策で今後推進していく対象となっている産業分野は半導体、人工知能(AI)、軍事産業、セキュリティー産業、次世代通信の5つ。この方針を受けて、台湾の国家発展委員会(日本の内閣官房に相当)が9月5日、具体的な目標数値などを発表している。
その中で目をひいたのはやはりAI関連。台湾の数位発展部(デジタル発展部)は政府傘下のファンドである国家発展基金と連携して、100億ニュー台湾ドル(日本円で約470億円、1元=約4.7円)の予算を確保し、特別投資を行うとしている。具体案で挙げられていたのはAIスマートアプリケーションの発展に向けた、新たなスマート省エネデータセンターの建設。台湾のAI関連の技術開発発展に向けて、設備投資などはさらに進むだろう。台湾における半導体関連業界はしばらく好況が続きそうだ。
AIブームの後押しで活況を呈したセミコンタイワン
AIの普及、利用拡大にともなって高性能な半導体の需要増が続いている。AI向け半導体メーカーのNVIDIAは2024年会計年度第2四半期の業績を発表。売上高は過去最高の135億1,000万米ドルで前年同期から101%増。NVIDIAは工場を持たないファブレス企業であり、その生産で前工程・後工程共に受託しているのは台湾のTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)。そのTSMCも先ごろ発表された第3四半期純利益が54%増で過去最高を更新している。
こうした台湾半導体業界の好調な受注を反映して、製造装置メーカーや部品・材料メーカーの肌感も悪くないようだ。9月4日から6日まで開催された半導体製造装置関連展示会、セミコンタイワンに出展していた日本の大手製造装置メーカー、パーツサプライヤー関係者からは今年の春を境にして、受注が一気に増加したという声が聞かれた。また、台湾の施設機器関連メーカーの関係者によると生産施設の整備への投資も活発化しているという。
AI関連産業の急速な進展の中、そのセミコンタイワンは今年、過去最大の約1,100社・団体が計約3,700ブースを出展という規模で開催された。主催者のSEMIによると開催期間中3日間の来場者数は約85, 000人で、前年比30%増だったという。
同展開幕式には台湾の行政最高機関であり、日本の内閣と各省庁を併せた機能を持つ行政院の卓栄泰行院長が出席、また、2日目には台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)の郭智輝部長が来場し、各社ブース視察を行っていた。
今回、セミコンタイワンの日本パビリオンには福岡県、本県と熊本市、佐賀県、九州大学と、TSMCが進出している九州勢に加えて北海道、山口県が出展。企業誘致活動を展開していた。熊本県のご当地キャラ、くまモンが会場内のメーカー各社のブースを訪問。来場客や出展企業のスタッフなどの記念撮影に応じていた様子は「熊本熊出没」というタイトルで台湾のニュースや新聞で報じられた。
台湾政府が日本人を政務顧問に起用
台湾では先ごろ、行政院の政務顧問に日本人の野崎孝男氏が就任している。野崎氏は台南市在住。台湾では「Mr.拉麺」という豚骨ラーメンチェーンの創業者として知られていた。任期は8月1日から1年間。野崎氏は頼清徳総統が台南市長だった2016年から同市の城市(都市)外交顧問を務めている。この抜擢に多くの人が驚いたのは行政院の政務顧問に外国人が就任したことがなかったからだ。