インド特派員 石﨑奈保子
世界のそうそうたるグローバル企業のトップには、多くのインド人企業が君臨している。例えば、Microsoft CEO:サティア・ナデラ氏(Satya Nadella)、Adobe CEO:シャンタヌ・ナラヤン氏(Shantanu Narayen)、Alphabet(Google) CEO:サンダー・ピチャイ氏(Pichai Sundararajan)、CHANEL CEO:リーナー・ナーイル氏(Leena Nair)、元Master Card CEO、現在、世界銀行総裁:アジャイ・バンガ氏(Ajay Banga)、FedEx CEO:ラージ・サブラマニアム 氏(Raj Subramaniam)など(下図参照)。2023年末時点で、Fortune 500企業(米国で売上高の高いトップ500社)の35社がインド系CEOであり、国際ビジネスの場で存在感を発揮している。
なぜインド人がCEOに招聘されるのか?それは彼らが数字に強く、単に英語が話せるということだけではない。インド人は実にタフな世界を生き抜いているのである。14億人以上の巨大な人口を支えるインドは、その内部にカースト制度や22の公用語、各種宗教など、複雑な社会構造が存在し、多くの社会的課題や経済的課題に直面している。その中でインドの人々は、これらの逆境に忍耐強く立ち向かい、創造的な解決策を模索し、手元の資源を有効活用して問題を回避するスキルを身に付けるよう強いられている。そのおかげで問題解決能力と創造性に富み、国際ビジネスという場においても、伝統にとらわれない大胆な戦略をもって、世界企業をリードすることが出来ているのだ。
「柿の種」で有名な亀田製菓のCEOもインド人である。ジュネジャ・レカ・ラジュ氏は、インドの大学で発酵について学び、1984年、発酵について学ぶために日本の大学に留学した。その後は、日本の食品化学メーカーで研究開発に取り組み、日本の大手製薬会社で副社長も務めた。グローバル化を目指す前会長の目に止まったのをきっかけに、2020年6月、亀田製菓に代表取締役副社長に就任し、2022年からは会長兼CEOとして今に至る。
「国内米菓の研究、開発力を食品事業、海外事業にも展開するべく、グローバル・ライスイノベーションセンター(GRIC)を創設し、横串の組織に変えたのです。これまで生産を担当してきた人は、インドでの生産についても考える。マーケディングを担当してきた人は、中国でのマーケティングも考える。海外で仕事なんてしたことのない社員がほとんでしたが、みなさん今はイキイキと海外にあるグループ会社で働いたり、出張に出たりしていますよ」(2024年6月GOETE記事よりhttps://goetheweb.jp/person/article/20240625-kameda-2-2?heading=3)
日本では英語のできる人材に海外事業を任せるが、ジュネジャ氏は、亀田製菓の仕事に愛着と誇りを持って働いていたメンバーを海外へ行かせることにこだわっているという。こうして社内は劇的に変化したのだが、この展開を社員たちは楽しんでいるらしい。社内では英語学習の支援なども行われ、英語を話したことがなかった人でも、亀田製菓の製品を世界に知らしめるために情熱と魂を注げるよう、サポート体制が整っている。
インド版柿の種「カリカリ」は、2020年1月に販売が始まった。亀田製菓が現地企業と合弁会社を設立し、工場も現地に新設し、デリーのほか、ムンバイやバンガロールなど主要都市の1000以上の店舗で販売されている。