
中国特派員 斉海龍
2024 年2 月8 日、中国民政部の公式サイトにて、2024 年の全国婚姻届出数が発表された。
民政部の「2024 年第4 四半期民政統計データ」によると、2024年の全国結婚届出数は610.6 万組、離婚届出数は262.1 万組であった。
2023 年には結婚届出数が768.0 万組、離婚届出数が259.3 万組であったため、結婚届出数は157.4 万組減少(約20.5%の減少)し、離婚届出数は2.8 万組増加(約1.1%の増加)した。これは、1980 年以来45 年間で最も低い結婚届出数となった。
ウィスコンシン大学マディソン校の人口統計学者である易富賢氏は、「これは前例のない事態だ!2020 年の新型コロナウイルスの流行時でさえ、結婚届出数の減少率は12.2%にとどまった」と述べていた。


このデータは、中国国内のメディアやネットユーザーの間で大きな議論を呼んでいる。『澎湃新聞』によると、2023 年には結婚届出数が一時的に増加したものの、2024 年には再び減少に転じた。2013年には1,300 万組以上が結婚していたが、10 年間で700 万組以上の減少となっている。このニュースはウェイボ―でも話題となり、ネットユーザーは「驚きだ!」とコメントし、結婚数の減少(前年比約20%)についてさまざまな意見を述べている。
ネット上のコメントを総合すると、離婚率の上昇の主な理由として、以下の点が挙げられる。
社会的価値観の変化と結婚観の自由化
- 若い世代は結婚に対してより理性的な考えを持ち、個人の幸福を重視し、結婚を人生の必須条件とは見なさなくなっている。
- 2024 年の結婚届出数は前年比約20.5%減少し、晩婚・非婚の傾向が顕著になっている。
- 「選択的シングル(選択的未婚)」という概念が注目されるようになった。これは、「結婚を望まず、意図的に未婚の状態を選択する」ことを指す。寿命の延び、初婚年齢や離婚率の上昇、女性の社会進出と経済的自立、性や家族のあり方の多様化などの要因が関係している。
- 社会全体が離婚を受け入れやすくなり、離婚に対する偏見が薄れてきている。
経済的プレッシャーの増大が結婚の安定性に影響
- 住宅価格や物価の上昇、住宅購入、子育て、医療などの経済的負担が増し、夫婦間の対立が激化している。
- 雇用不安の増大により、産業のリストラや収入の不安定化が進み、将来への不安が強まり、家庭内の対立が深刻化し続けている。
- 「まず家を買ってから結婚」「経済的に厳しいため結婚を先延ばし」といった理由で、結婚の基盤が不安定になっている。
女性の経済的自立が進み、離婚の選択肢が増加
- 女性の教育水準の向上、職場でのキャリアアップの機会の増加により、経済的に自立する女性が増え、結婚への依存度が低下している。
- 伝統的な「男性が外で働き、女性が家庭を守る」というモデルが崩れつつあり、それに伴い夫婦間の価値観のずれが生じ、離婚の一因となるケースが増えている。
SNS とインターネットの影響
- 出会い系アプリやSNS の普及により、新たな交友関係を築きやすくなり、浮気や不倫、価値観の不一致が増えている。
- ネット上の「反婚主義」や「独身推奨」の風潮が若者の結婚観に影響を与え、離婚のハードルが低くなっている。
離婚冷静期間の影響が薄れる
- 2021 年に導入された「30 日間の離婚冷静期間」により、一時的に離婚率が減少したが、人々がこの制度に慣れたことで、再び離婚率が上昇している。
高齢者離婚の増加
- 「シルバー離婚」(老年離婚)の増加。長年の不満や価値観の違いにより、熟年夫婦の離婚も増えている。
- 年金や不動産の分配問題が高齢者間の争いを引き起こし、離婚を決断するケースが増加している。