モビリティの電動化が進む台湾

台湾特派員:諸治隆仁

台湾で人々の足となっている交通手段の一つにYouBike(微笑自転車、ユーバイク)がある。ユーバイクは環境保護と省エネという目的で構築された自転車のシェアシステム、レンタサイクルだ。そのYouBikeも電動化された車両の本格的な普及が始まり、台北市内のレンタルステーション各所で見かけるようになってきた。EV、電動スクーター、EVバス、そして電動アシストシェアサイクルと、台湾のモビリティは電動化が進んでいる。

電動アシスト機能を搭載したレンタル自転車の普及拡大

YouBike2.0Eは後部車輪カバーが濃いオレンジ色

レンタサイクルのYouBikeは当初、台北市政府と自転車の大手メーカー、ジャイアントが2009年から共同の実証実験を開始。2012年から正式にサービス開始。現在、運営会社はジャイアントの子会社である微笑單車となっており、新北市、桃園市、新竹市など台湾の主要都市でサービス提供されている。

オレンジ色の車体に変速ギア3速の車両でスタートしたYouBike 1.0はその後、2020年から白い車体で3速ギア、QRコードで貸し出しが可能になる端末が搭載されたYouBike 2.0の車両が登場。2022年にはモーターによる電動アシスト機能がついたYouBike2.0Eの車両によるサービスが台湾中部で先行して開始となった。昨年から台北市内でもようやくYouBike2.0Eの車体が見られるようになっている。

YouBike2.0Eはジャイアントが開発した電動モーター「中置モーターユニット」と大容量のリチウムイオン電池を搭載しており、フル充電の状態で平坦な道であれば80kmの走行を可能としている。

電動スクーターはバッテリーのサブスク契約で

電池交換のためのGoStationはスーパーの店頭などにも設置

朝の通勤ラッシュ時、多くのスクーターが信号待ちをしている光景は、台湾を紹介する番組で何度も取り上げられていることから、目にしたことがあるという人も少なくないだろう。スクーターは古い車両が多く、排ガスによる環境汚染の問題は深刻。そうした中、環境負荷低減と産業振興を目指し、台湾では政府が補助金を出し、電動スクーターの普及拡大を図ってきた。

台湾の電動スクーターの最大手はスタートアップ企業の睿能創意(Gogoro)。同社は2011年に設立され、2015年、販売開始。台湾での普及拡大に加えて、海外へも進出しており、昨年は2024年には住友商事、三井住友ファイナンス&リースが同社との連携協定締結を発表。住友商事はGogoroの台湾での事業拡大、インドおよび東南アジア諸国への事業参入を支援していくという。

Gogoroによる電動スクーターの特徴はバッテリーが交換式、サブスクリプション契約で提供されるということ。電池がなくなると同社が設営している交換式バッテリー用充電ステーション「GoStation」へバッテリーを持ち込み、充電が終わったバッテリーと引き換える。GoStationは2025年1月現在で台湾全土2,696カ所、12,785ラックが設置されている。

電動スクーターはバイクシェアサービスを通じても普及が進んでいる。Gogoroが「GoShare」、スタートアップ企業WeMo Scooter が「WeMo」、トヨタ自動車の台湾総代理店である和泰汽車が設立した和雲行動服務が「iRent」と、3ブランドが電動スクーターのシェアリングサービスを提供。いずれのサービスも路駐されている電動スクーターをスマートフォンのアプリで借りて、乗り終わったら再び路駐するというシステム。スクーターの駐車スペースであればどこでも、乗り捨てが可能となっている。

EVバスの普及率は32%で2025年目標をすでに達成

「100% Electric」EVをアピールする台北市内の路線バス

日本の国土交通省に当たる交通部は2024年12月13日、運輸部門のゼロエミッション転換に関するアクションフォーラムを開催。その中で、2022年に打ち出した「2050年ゼロエミッション排出目標」に関する達成状況、成果が発表された。

台湾政府の「2050年ゼロエミッション排出目標」は12の重要戦略を通じてその達成を目指している。中でも交通部が主導権を握って進めているのが、重要戦略7の「輸送機関の電動化と脱炭素化」と、重要戦略10の「ゼロエミッションのグリーンライフ」における「低炭素交通ネットワーク」。経済産業省に当たる経済部や、環境省に当たる環境部などの各部会と協力して推進中だ。

とくに電動化では「2030年都市部のバス全面電動化」政策が掲げられており、公共交通を優先するという方針のもと、エネルギー転換を促進。こうした状況を背景に台北市内では「100% Electric」「EV」と塗装された路線バスの車両を見かける機会も増加している。

フォーラムで交通部が発表したところによると、EVバスは3,358台に達し、普及率は32%。政府が掲げた2025年の目標である25%を越えた。また、台湾で設置されている公共の充電スタンドは現在9,770基。その内訳は普通充電スタンドが7,379基、高速充電スタンドが2,391基)となっており、電動車両の使用、利用拡大に向けた環境整備を進められている。