バカンス大国フランス

フランス特派員 大貫麻奈


 「フランス人はバカンスのために生きている」

多くの人がこの言葉を耳にしたことがあるだろう。しかし、実際にそんなに長い休みを取ることは難しいだろうと考えていた。しかし、フランスに来て驚いたのは、びっくりするほど長いバカンス(休暇)期間があることだ。

日本人にとってはあまり想像できないことだが、バカンスを取ってもいいというだけでなく、取らなければならないという「義務」になっていることにはさらに驚かされた。学生は毎年、バカンスの予定が国から発表されるほど重要な年間行事となっている。もちろん、社会人と学生ではバカンスの日数も異なるが、今回はその仕組みとバカンス中に何をするのかについて見ていきたい。

まずは学校の休暇についてである。学生には年に5回の長期休暇があり、約1ヶ月半の授業の後に2週間ほどの休みが4回ある。そして年度末の夏休みには8週間の休暇がある。また、バカンスによる人口過密を避けるために、フランス本土をA、B、Cの3つのゾーン(+コルシカ島)に分け、各ゾーンごとにバカンススケジュールが少しずつ異なるのである。


・Vacances de la Toussaint (諸聖人の日) *10月中旬~11月初旬(2024年は10/19~11/4)
11月1日は諸聖人の日(カトリック教会の祝日の一つで、全聖人と殉教者を記念する日であり、「万聖節」とも呼ばれていた)であり、祝日でお墓参りをする日でもある。日本のお盆にあたるような日である。

・Vacances de Noël (クリスマス休暇) *12月21日~1月6日

・Vacances d’hiver (冬休み) *2月上旬~3月上旬(ゾーンによって変わる)
通称「スキーバカンス」

・Vacances de printemps(春休み) *4月上旬~5月上旬
Pâques(復活祭、イースター)の頃

・Vacances d’été(夏休み) *7月~8月
年度末の休暇

とにかくバカンスが多い学生であるが、フランスの学校、とくに大学は日本と違い入学後から非常に厳しいため、学生はアルバイトなどをする時間がないと言っている人がほとんどである。バカンス明けにテストがある場合もあり、なかなか休めない時もある。しかし基本的には、集中して勉強して試験を終え、その後バカンスで羽を伸ばす。家族や親戚に会いに行ったり、旅行をしたりと、非常にメリハリがあるように感じるのである。

続いて社会人のバカンスである。学生よりは短いものの、法律で厳格に定められており、年間に最低約5週間の有給休暇を取得することができるのである。このうちの2週間は連続して取得しなければならず、5月から10月までの間に取得するという決まりもある。

とくに夏のバカンスは取ってもいいというよりも、むしろ取らなければならないバカンスである。会社はもちろん、7月と8月はレストランやさまざまなお店もお休みになってしまうことが多い。バカンス中は一切仕事をしないため、メールも返信は返ってこないし、電話ももちろん繋がらない。

しかし、仕事を回すためにバカンスもずらして取得するため、当然、誰かが休む時には誰かが大変になる。それでも「お互い様だよね」と気持ちよくみんなが当たり前に交互に休暇を取れるのは、なかなかできることではないと感じる。とくに日本では周囲に気を遣い、同じように休暇を取ることは難しいだろうと思う。

フランスでは、夏のバカンス中に南フランスの美しい海辺に行って、こんがり日焼けをすることがステータスとなっている。そのため、アジア人の考え方とは対照的に、色白の肌よりもバカンスを存分に楽しんだ焼けた肌の方が良いとされている。

今は少しずつ考え方も変わってきているものの、肌が白すぎると、バカンスにどこにも行けない可哀想な人という見方をされることもあるのである。

基本的にバカンス中は、アパートや別荘を1週間ほど借りて、とにかくのんびり過ごす人が多い。体を休めて日常から離れてリフレッシュするというのがバカンスの醍醐味である。

夏のバカンスでの人気の場所はやはり海である。中でもコルシカ島、コート・ダジュール、モン・サン・ミシェルやサン・マロのあるブルターニュ地方は、フランス人にとても人気がある場所である。

今回はフランスのバカンスについて見てきたが、日本とはいろいろな点で違いがあり、非常に興味深い。とくに、自分たちを幸せにし、楽しませる点において、フランス人は非常に優れていると感じる。この点に関しては、いつも見習いたい素敵なポイントだなと日々感じるのである。