ドイツ特派員 畠山佳奈子
ドイツの自動車関連展示会に参加される日本の皆様から、ドイツ国内のEV充電インフラの現状について多くの質問をいただきました。そこで今回は、皆様が関心をお持ちであろうドイツのEV充電インフラの現状と、EV充電に関する最新のイノベーションについてお話ししたいと思います。
ドイツは、欧州内でもインフラ整備が比較的進んでいる国の一つですが、電気自動車(EV)の普及をさらに促進するためには、依然として多くの課題が存在しています。以下に、現状と主要な課題を簡潔にまとめました。
2024年3月時点で、ドイツには電気自動車用の公共充電ポイントが128,000カ所以上あります。そのうち約10万3,000カ所がAC充電ポイント(交流)で、約2万5,000カ所が急速充電ポイントです。充電ステーションの数は前年から38%増加しており、特に急速充電インフラの拡大が近年著しく進んでいます。
私が住んでいるミュンヘン市(人口150万人)には、現在582カ所に約2,358の電気自動車用充電ポイントがあります。これらの充電ポイントには、タイプ2ソケット、CCS(コンバインド充電システム)、CHAdeMO(チャデモ)など、さまざまな接続方式が対応しています。ミュンヘン市では、2026年までにさらに1,300カ所の充電ステーションを新設する予定です。
では、ドイツの充電ステーションにどのような課題があるのでしょうか?
まず、地方での充電インフラ不足が指摘されています。都市部では充電インフラが整備されているものの、地方や郊外では依然として充電ステーションの不足が課題となっています。このため、地方在住者や長距離ドライバーにとって、EVの利用が制約されることがあります。
また、電気自動車のユーザーからよく聞かれる不満の一つに、統一された支払いシステムの欠如があります。現在、複数の異なる運営会社が存在し、それぞれ異なる支払い方法や会員制度を採用しているため、充電ステーションの利用が非常に不便だと感じているユーザーが多いです。そのため、ユーザーからは統一されたプラットフォームの導入が強く求められています。
急速充電ステーションの整備は進んでいますが、それでも依然として充電に時間がかかる場合があります。特に長距離ドライバーにとって、充電時間がネックとなることが多く、バッテリー技術のさらなる進化や充電速度の向上が求められています。
一方で、ドイツのEV充電におけるイノベーションも着実に進んでいます。特に注目すべきプロジェクトとして、従来の自動車への給油のようにシームレスな体験を目指した取り組みがあります。例えば、高速道路沿いでEVを30分以内に充電できる超高速充電ステーション(ハイパワー充電)の開発です。
その一例が、ドイツのADS-TECエナジー社による多機能急速充電ステーション「ChargePost」です。このステーションは統合型バッテリー・システムを搭載しており、限られた電力網でも超高速でEVを充電することが可能です。この製品は、2024年のドイツ・イノベーション・アワードを受賞しました。
ケーブルを必要としないワイヤレス充電技術や、太陽光発電を利用した充電ステーションの導入も注目されています。これらの充電ステーションは、グリッド負荷のピーク時でも継続的にクリーンなエネルギーをEVに供給することが可能です。
また、EV充電インフラのイノベーションとして、日本でも以前検討されていた電柱を活用したEV急速充電器の設置サービスも再び注目されています。さらに、100%再生可能エネルギーから供給された電力を使って、自宅で充電できる技術も進化してきています。
こうした多様なイノベーションは、EV市場の拡大と共に進んでおり、ドイツの電動モビリティの目標を達成し、持続可能な未来を確保するために不可欠と言えるでしょう。
参考資料
BNetzA: Mehr als 100.000 öffentliche AC-Ladepunkte in Deutschland – electrive.net
Öffentlich laden | SWM Ladestationen | Stadtwerke München
世界最速の「5.5C充電」アピール、中国ジーカー、ドイツで最新の電動技術を披露 | レスポンス(Response.jp)
E-Taxi mit Wechselbatterie: Testlauf in Berlin | tagesschau.de
Elektroauto: Nio ET5 mit Wechselakku in Deutschland erhältlich – Golem.de