ドイツ特派員 畠山佳奈子
ドイツの自動車メーカーにとって、電気自動車(EV)開発への大きな推進力とともに、電動化は依然として主要な焦点である。フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツといった主要ブランドは、電気自動車技術に多額の投資を行い、新しい電気自動車モデルを発表し、電気自動車ポートフォリオを拡大している。
自律走行
自律走行技術もイノベーションの重要な分野である。ドイツ企業は先進運転支援システム(ADAS)や完全自律走行車の開発で大きく前進している。アウディやメルセデス・ベンツのようなブランドがその最前線にある。
サステナビリティとグリーン・マニュファクチャリング(環境に優しい方法で完成品を生産するプロセス)
環境問題に敏感なヨーロッパでは持続可能性はますます重要な優先事項となってきている。
ドイツの自動車メーカーは、カーボンニュートラルな生産を目指し、環境に配慮した製造方法を採用している。たとえばBMWのライプツィヒ工場では、エネルギーに風力タービンを利用している。またアウディは2025年までに世界の自動車生産でカーボンニュートラルを実現し、グローバルで20種類の電動化モデルの導入を決定した。さらに原材料の調達や製造段階のCO²削減を目指している。
デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーションは、ドイツの自動車産業を再構築している。自動車メーカーは、製造からカスタマー・エクスペリエンスに至るまで、業務全般にわたり、デジタル技術を統合している。
戦略的パートナーシップとコラボレーション
自動車産業におけるイノベーションの推進には、戦略的パートナーシップとコラボレーションが不可欠である。ドイツの自動車メーカーはテクノロジー企業と提携し、自律走行やデジタル・コネクティビティなどの分野で能力を強化している。フォルクスワーゲンとフォードの提携、BMWとトヨタの提携などがその例である。
その他、 IoT技術を活用してさまざまなデジタルサービスを提供するコネクテッドカー(インターネットへの常時接続機能を具備した自動車) の開発、代替燃料とハイブリッド技術の探究、サービスとしてのモビリティ(MaaS)などの革新的なアイデアも挙げられる。
こうした進歩にもかかわらず、ドイツの自動車産業はいくつかの課題に直面している。EUが定める新規登録車の二酸化炭素排出量に関する規制対応、特にEV技術で急速に進歩している中国の企業との世界的な競争、サプライチェーンの混乱などが大きなハードルとなっている。ドイツのEV市場の問題については、フォードの監査役会のトップであるグンナー・ヘルマンは、2024年7月26日付のFOCUS ONLINEインタビューでドイツのEVの売り上げが予想していたほど伸びていないとドイツのEV市場に警鐘を鳴らしている。
しかしながらドイツの自動車産業は、政府の支援などに支えられながら、イノベーションと持続可能性とデジタルトランスフォーメーションに重点を置き、自動車セクターのグローバル・リーダーであり続けようとしている。
〔参考資料〕
German govt supports car industry transformation with investment programme | Clean Energy Wire
New technologies are putting car industry to the test – KPMG Germany
ID.4 | SUV | フォルクスワーゲン公式 (volkswagen.co.jp)
BMWがEV「i4」と「iX」の詳細を発表…性能も価格もテスラがライバル | Business Insider Japan
Top 10 Automotive Industry Trends | StartUs Insights (startus-insights.com)
Audiが推進するサステイナビリティ > Sustainability > Stories of Progress > アウディジャパン
German govt supports car industry transformation with investment programme | Clean Energy Wire
Top 10 Automotive Industry Trends | StartUs Insights (startus-insights.com)
ドイツ自動車産業が直面する課題と今後の展望 | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ (jetro.go.jp)