
ドイツ特派員 畠山佳奈子
今回は、ドイツの教育システムについてお伝えします。ドイツの教育システムは多様性に富むため、一般的な教育制度と、マイスター制度を含む職業教育について、2回に分けてご紹介します。この内容が、ドイツ人をより深く理解するための何らかのヒントになれば幸いです。
ドイツは日本と比べて面積も人口も少ない国ですが、教育システムは連邦制に基づいており、各州が独自の教育政策を持つ点が特徴です。学校教育、大学政策、職業教育のカリキュラムや試験基準は州ごとに異なります。これにより、義務教育の開始年齢や学期の開始・終了時期、学校制度の運営方法なども州によって異なります。
小学4年生でもう将来を考えなければならない!!?

- ギムナジウム(Gymnasium): 日本における中高一貫教育に小学校高学年を合わせたような長期的な学校であり、大学進学を目指す生徒向け。通常、5年生から12年生または13年生まで(州による)
- レアルシューレ(Realschule): 実科学校。中級専門職や職業訓練を目指す教育を提供。日本でいう高校1年生で卒業資格を取り、その後は職業研修を行ったり、Fachabitur(専門大学入学資格)を取得して大学に進学することも可能です。成績が良い生徒はレアルシューレからギムナジウムに進学できる制度もあります。
- ハウプトシューレ(Hauptschule): 基幹学校。基本的な学力を重視し、職業訓練に直結。例えば、私たちが住んでいるバイエルン州では、小学4年生の時点で、将来大学進学を目指すべきか、それとも早期に職業に就くべきかを決める必要があります。さらに、文系・理系といった専門分野の方向性も含め、早い段階で将来を考えるのが特徴です。このようなシステムについて、私自身、息子が小学4年生の時点でこのような重要な決断を迫られたことに非常に驚きました。
日本の教育と異なる点日本の教育と異なる点
- ドイツでは学力が追いついていないと判断された場合、小学生でも留年することがあります。また、成績不振(通知表で「5」が2つ、「6」が1つの場合などは即留年)の場合も留年となる可能性があります。(※通知表では、1が最も良い成績、6が最も悪い成績です。)
- さらに、日本と異なる点として、多くの州(バイエルン州を除く)では、教師の進学先に関する推薦はあくまで参考とされ、親が最終的にギムナジウムなどの進学先を決定する仕組みになっています。
- ドイツではデュアルシステムと呼ばれる職業訓練制度が充実しています。義務教育は15歳までですが、18歳未満の場合、全日制の学校に通わない場合でも、就職しながら定時制職業学校(Berufsschule)に通学する義務があります。職業高校については、次のリポートで詳しくお伝えします。
- 学生が主体的に学ぶ姿勢を求められます。
- 大学の学費は、ほぼ無料か、非常に低額(国立大学は無償または年間1,000ユーロ)程度です。

ドイツで大学進学の場合、ギムナジウム(Gymnasium)の11、12、13年生での成績に加え、アビトゥア(高校卒業認定資格試験と大学入学資格試験を兼ね備えた試験)の点数が総合的に評価され、その成績に基づいて進学可能な大学が決まります。なお、ドイツの大学は学問的なレベルが高いため、ドイツで大学に入れなかった場合、オーストリアなど他国の大学へ進学するケースもよく見られます。
ドイツの教育システムは高い評価を受ける一方、以下の課題が指摘されています。
- 学力の低下: 最近の調査では、生徒の基礎学力が低下していることが示されています。
- 移民・難民の子供の増加と教育格差: 言語能力や文化の違いから、学力格差が拡大しています。
- 教員不足: 特に専門分野における教員不足が深刻で、その影響により授業が中止されることもしばしばあります。
これらの課題に対する改善が、ドイツの教育システムの今後の重要なテーマとなっています。
次回はドイツの職業教育についてお伝えします。
参考資料:
ドイツのマイスター制度 – マイスター制度を理解するためのキーワード – ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト
ドイツの教育制度の特徴や日本との違いを分かりやすく解説! | ドイツ語オンラインレッスン「Vollmond (フォルモント)」の公式サイト
Bundesministerium für Bildung und Forschung (BMBF)
公式サイト
Kultusministerkonferenz (KMK)
公式サイト
Bundesinstitut für Berufsbildung (BIBB)
公式サイト
Deutscher Industrie- und Handelskammertag (DIHK)
公式サイト
ドイツ基礎データ|外務省
Education at a Glance 2024 | OECD
ドイツの子どもの学力低下問題 教育制度が変化に対応できず