ガンジーの思想とSDGs:Mani Bhavan(マニ・バワン)を訪ねて

インド特派員 石﨑奈保子

 マハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)は、「インド独立の父」として知られており、「非暴力」「真理の追求」「自給自足」「共感」「持続可能な社会の構築」といった思想は、現代のSDGs(持続可能な開発目標)に通じる価値観である。とりわけ、SDGsの目標1(貧困をなくそう)、11(住み続けられるまちづくりを)、12(つくる責任 つかう責任)、16(平和と公正をすべての人に)は、ガンジーの理念と深く共鳴している。

SDGsの根幹にある「誰一人取り残さない」という理念は、ガンジーが生涯を通じて追求した社会正義と倫理的行動の指針と一致しており、彼の思想は現代の社会課題に対する普遍的な解決のヒントを与えてくれる。その価値は、時代を超えて色褪せることがない。

現代の社会課題に対する普遍的な解決のヒントがある。

 1917年(47歳)から1934年(64歳)まで、ガンジーはムンバイの閑静な住宅街にある宝石商の邸宅に滞在していた。この邸宅は現在、「ガンジー記念館(Gandhi Sangrahalaya)」として一般公開されており、博物館兼図書館として多くの来訪者を迎えている。1階は図書館、2階にはガンジーが実際に使用していた部屋が保存されており、彼の生活と思想を体感することができる。

マニ・バワン外観
1階 ガンジーの銅像と図書館
2階 写真ギャラリー
3階 ガンジーの部屋:2010年には米国オバマ大統領夫妻が訪問した】

 ガンジーといえば、糸車(チャルカ)と手紡ぎ布(カーディー:チャルカによって手で紡がれた糸を手織りで織り上げた布地の総称)である。この家に滞在中に糸車の使い方を覚えたので、これらはインド独立運動の象徴として広く知られるようになった。マニ・バワンを拠点に、ガンジーは「非暴力・不服従運動(サティヤーグラハ)」「スワデシ運動(国産品推進)」「カーディー(手紡ぎ布)運動」「塩の行進(ダンディ・ヤートラ)」など、数々の重要な運動を計画・指揮した。この場所には、ガンジーに助言を求めるためにインド国内外から多くの人々が訪れ、彼の思想と行動が世界に広がるきっかけになったのである。

 マニ・バワンは、ガンジーの生き方や考え方に触れられる特別な場所だ。ガンジーが大切にした「誰もが幸せに暮らせる社会をつくる」という思いは、現代に通じる大切なメッセージである。