インドの5Sマニュアル

インド特派員 石﨑奈保子

日本式の5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)は、アメリカ、ドイツ、中国、韓国等の国で実践されているが、インドでも「カイゼン」と「5S」の浸透を目的としたセミナーが定期的に開催されている。インド企業は、5Sを導入することで無駄の削減と品質管理の強化を行い、これによりインドの国際的な競争力を高めようとしている。

下記の写真は、インドローカル・中小企業の現場写真であるが、だいたい壁際にはカラフルな5S看板が掲げられており、従業員はみな、ニコニコしながら「日本の5Sです」と紹介してくれる。どれほど5Sを入念に実践しているかは定かではないが、少なくとも5SがSEIRI, SEITON, SEISO, SEIKETSU, SHITSUKEであり、日本発祥であることは知っているようだ。 

インドで定期開催される研修会は、海外での人材育成を担う一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS、東京)が主催している。2024年11月にはニューデリーにて、インドの中小零細企業省が所管する職業訓練教育機関の指導者15人を対象に行われた。

AOTSの支部は9つあるが、中でもチェンナイ支部「ABK-AOTS DOSOKAI」が最も活発であり、日本の総理大臣や外務大臣も訪ねるくらいに有名である。日本とインドの架け橋となることを目的とし、JICA等を通じて日本企業で研修を受けたエンジニア、エグゼクティブ、起業家らが自主的に(ボランティア活動として)結成したというから驚きだ。

このAOTSチェンナイ支部を訪ねると、独自で作成した5Sマニュアルやポスターが置いてある。英語版とタミール語版があり、いずれも写真や漫画付きで大変わかりやすい内容となっている。とくに写真による事例紹介は、各Sに対して10枚以上紹介されており、親切であると同時にメンバー企業が相当頑張って事例を作ったのだということがわかる。

ポスターの種類も沢山あり、そのうちのひとつ(写真下)などは、よく見れば真ん中のSが、「清掃(SEISO)」でなくてはならないところを、「製造(SEIZO)」になってしまっているが、インド人はSをZで発音する人もいるので、これは良しとしよう。(例えば、インド人はConsumerコンシューマーを、コンジュ―マーと発音する。)

インドは、さすが英語を公用語としているだけあって、英語バージョンの5Sも存在する。①Sorting, ②Systematizing, ③Shining, ④Standardizing, ⑤Self-disciplineの5Sである。

5S以外にも、某金属プレス企業において、洒落たなポスターがあったので以下ご紹介する。

1) QUALITY is doing your BEST…In WHATEVER you do!  

品質とは、何をするにしても、自分のベストを尽くすこと!

2) QUALITY… IT’S THE WAY TO SAY ‘WE CARE’  

品質・・・ それが 「私たちは気にかけています 」と言う方法なのです。

3) OUR AIM ZERO Accidents, defects, delays, inventory, breakdowns, changeovers, wastes

我々の目標は、ゼロ事故、ゼロ欠陥、ゼロ遅延、ゼロ在庫、ゼロ故障、ゼロ交換、ゼロごみです。