リニア中央新幹線の建設計画で長年停滞していた静岡工区の工事が、環境安全評価を踏まえて再開へ向けて大きく進展しました。静岡県の鈴木康友知事は7月7日、南アルプストンネルの一部となる静岡工区(約8.9キロ)の着工を正式に容認し、JR東海は年内にも工事に着手できる見通しです。約9年間止まっていた区間がようやく動き出すことになります。
静岡工区は南アルプスの地下深部を掘削する極めて難易度の高い区間であり、JR東海は「最難関の工事」と位置付けています。標高3000メートル級の山々の下を通すため、地圧が大きく、施工には高度な技術と長期の作業が不可欠です。
静岡県が反対してきた主な理由は、大井川の水量減少への懸念と南アルプスの生態系への影響でした。県は専門部会を設置し、地下水流動、動植物への影響、土砂流出リスクなどを総合的に評価しました。評価では、JR東海が提示した水資源モニタリング体制、影響発生時の補償措置、濁水管理、土砂流出防止策などが一定の妥当性を持つと判断されています。また、トンネル掘削による地盤変動や崩落リスクについても、専門家による解析が行われ、安全性確保のための施工管理体制が整備されていると評価されました。
こうした環境安全評価を踏まえ、鈴木知事は「環境保全と工事の両立は可能」として着工を容認しました。一方で、前知事の川勝平太氏は退任後も「大井川の水を守るため、工事再開には反対だ」との立場を維持しており、県内には依然として慎重論も残っています。
工事再開により、品川―名古屋間の整備は全区間で動き出します。リニアは最高時速500キロで走行し、所要時間は現行の約86分から最速40分へ短縮される予定です。新大阪まで延伸されれば、東京―大阪間は67分で結ばれる計画です。
一方で、静岡工区の工事には最低10年を要すると見込まれ、開業時期は2036年以降にずれ込む可能性が高いとされています。工事費も当初の5.5兆円から11兆円へ倍増しており、資材費や人件費の高騰が背景にあります。
今回の着工容認はリニア構想の実現に向けた大きな一歩ですが、環境保全と安全確保を継続的に検証しながら、慎重な工事進捗が求められます。


