政府は、総額3兆円強となる2026年度補正予算を成立させた。中東情勢の不透明化によるエネルギー価格の急変リスクが影を落とす。政府は「国民生活と経済活動を守るための万全の備え」と位置づけ、電気・ガス料金の支援継続や新たな予備費の創設など、即応性を重視した財政措置を打ち出した。
今回の補正の柱は、「中東情勢等対応予備費」2.5兆円の創設である。原油供給の不安定化や燃料価格の高騰が懸念される中、政府は状況に応じて迅速に支援策を講じられるよう、使途を限定しない大規模な予備費を新設した。ガソリンや灯油など燃料費補助の継続、中小企業の資金繰り支援、物流や医療物資の供給網確保など、幅広い分野での活用が想定されている。
また、電気・ガス料金の負担軽減策も補正予算の重要な要素だ。政府は5月に一般予備費から5135億円を支出し、7〜9月の家庭向け電気料金を1kWhあたり3.5〜4.5円補助することを決定していた。標準的な家庭で「3カ月5000円程度」の負担軽減効果が見込まれる。この取り崩しで減った予備費を補正で補填し、当初の1兆円規模に戻す措置も盛り込まれた。
今回の補正では、重点支援地方交付金を1000億円増額し、国の支援が届きにくい層への対策を自治体が柔軟に実施できるようにした。特別高圧電力やLPガス利用者、医療・福祉施設、地域交通、農林水産業など、地域特有の負担増に対応するための財源を確保し、エネルギー価格の急変リスクに備える狙いがある。
財源は全額が特例公債(赤字国債)で賄われる。ただし、財務省は「国債市場への影響はない」と説明する。2025年度分の特例公債のうち約3兆円が、税外収入の増加などにより発行不要となる見通しで、今年度の追加発行と相殺する形で、市場に出回る国債総量を増やさないためだ。
高市総理は会見で「リスクの最小化を徹底し、国民生活を守る」と強調した。中東情勢の緊迫化が続く中、今回の補正は“守り”を固めるための緊急対応色が濃い。一方で、赤字国債への依存が続く財政運営の持続性には課題も残る。政府は債務残高対GDP比の安定的な引き下げを掲げるが、エネルギー価格の変動が長期化すれば、追加の財政対応が必要となる可能性もある。
今回の補正予算は、国際情勢の不確実性が高まる中での「危機管理型予算」といえる。今後は、予備費の具体的な執行状況や、エネルギー価格の推移が焦点となる。

