トコトンよくわかる国債のはなし

近年、報道では「国債残高1,000兆円超」「国民一人当たり900万円の借金」といった数字が強調されるが、国債の性質を正確に示すものではない。国債は満期ごとに借換債を発行して継続的に運用される仕組みであり、国家は永続する前提で設計されている。このため、残高をゼロにする必要はない。

財務省によれば、2026年6月末時点の国債・借入金・政府短期証券を合計した「国の借金」は 1346兆6,833億円となり、3月末から 2兆8,407億円増え過去最大を更新した。普通国債残高は 1110兆8,839億円で、6兆5,855億円増加した。償還財源の不足を補う借換債が増え、政府短期証券は一時的な資金繰りのため 94兆3,994億円となった。

国債の約9割は国内で保有され、円建てで発行されている。海外依存度が低く、日銀が大量に保有するため、急激な資金流出やデフォルトの可能性は低い。日銀保有分の利息は最終的に国庫へ戻るため、政府外への資金流出も限定的である。したがって、残高の絶対額のみで財政危機を論じることは妥当ではない。

一方、借換債には利払い費が発生し、財政負担は確実に積み上がる。防衛費の見直しやGX経済移行債(5兆1173億円)の発行など、今後の財政需要を踏まえると、債務抑制の度合いが市場の信認を左右する。拡張的な財政運営への懸念から、金融市場では金利上昇リスクが指摘されている。

2026年6月成立の補正予算では、食料品の消費税率を2年間限定で引き下げ、1%分の給付を組み合わせて「実質ゼロ」とする措置が盛り込まれた。首相は5兆円規模の財源を赤字国債に頼らず確保するとしたが、歳出増を税収のみで賄うことは難しく、財政運営への懸念は残る。

我が国の財政は長年、歳出が歳入を上回る構造にあり、公債依存度は令和7年度で約25%に達する。普通国債残高は令和8年度末に1,145兆円となる見込みで、国債費は歳出の約4分の1を占める。金利のわずかな変動が財政に大きな制約を与える状況である。

社会保障費は高齢化に伴い自然増が続き、歳出の約3割を占める。税収は増加傾向にあるものの、構造的な歳出増を吸収するには不十分で、基礎的財政収支は慢性的に赤字である。

重要なのは債務残高の大きさではなく、債務を安定的に維持できる財政構造を確保できているかである。人口構造の変化に耐え得る制度設計と、歳入・歳出・制度改革の三位一体の取り組みが不可欠である。

「国の借金」は 1346兆6,833億円に達した