非上場株の相続税評価見直し論議に広がる危機感

10月22日に開かれた自民党の会合では、岸田文雄元首相が日本経済の成長や企業活動を支える制度の重要性について言及し、現場の実態を踏まえた政策対応の必要性を訴えました。 中小企業を取り巻く課題が多様化する中、事業承継における大きな課題の一つとして、非上場株の相続税評価が改めて注目を集めています。

日本の中小企業では経営者の高齢化が進み、円滑な事業承継が地域経済や雇用の維持に直結する重要なテーマとなっています。しかし、後継者への株式承継に伴う相続税負担が重く、事業承継の障害となるケースも少なくありません。

非上場株には市場価格が存在しないため、相続税評価額は国税庁が定める財産評価基本通達に基づき算定されます。中小企業の多くに採用される類似業種比準方式では、上場企業の株価や配当、利益、純資産などを基準として評価額が計算されます。一方、会社の規模や業種によっては、会社の純資産価額を基礎とする純資産価額方式が適用される場合もあります。

純資産価額方式では、帳簿上の純資産である「簿価純資産」ではなく、土地や有価証券などの資産を相続税評価額等に修正したうえで企業価値を算定します。そのため、長年にわたり蓄積してきた資産を多く保有する企業では、実際の資金繰り状況以上に高い株価評価となることがあります。

また、類似業種比準方式においても、企業が生み出す利益水準が評価に反映されます。いわば将来にわたって期待される「残余利益」を含めた収益力が株価評価に織り込まれるため、収益性の高い優良企業ほど評価額が上昇しやすい構造となっています。経営努力によって企業価値が向上した結果、事業承継時の税負担も増加するという側面があるのです。

とくに製造業では、設備投資や技術開発、人材育成に備えて内部留保を積み上げてきた企業が少なくありません。その結果、株価評価額が高額となり、後継者が納税資金を確保するために借入れを行うケースや、自社株の一部を手放さざるを得ないケースもみられます。

政府は事業承継税制により一定の納税猶予制度を設けていますが、利用にはさまざまな要件があります。そのため、中小企業関係者からは、事業継続や雇用維持への貢献を踏まえた、より実態に即した非上場株評価のあり方を求める声も上がっています。

非上場株の相続税評価をめぐる議論は、単なる税制改正の問題ではありません。地域産業や技術、人材を次世代へ引き継ぐための基盤づくりとして、今後も重要な政策課題となりそうです。